ストックオプションとは? 初心者向けに仕組みと活用方法を解説

ストックオプション、今の会社で初めて付与されたけどよく分からない……ということはありませんか?
ストックオプションと同時によく聞く言葉、例えば「ベスティング」や「行使期間」など、初めて聞く方にはとっつきにくい印象を受けるかもしれません。
ここではシリーズ形式で、ストックオプションの仕組みやセカンダリーマーケットに至るまで、しっかり理解できる内容をお届けいたします。シリーズ一本目となる本稿では、ストックオプションの基本や重要な専門用語、ストックオプションを持つことのメリット・デメリットについて解説していきます。
<経営管理プラットフォーム「FUNDOOR(ファンドア)」がお届けします>
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目次: |
1. ストックオプションとは? 概要とキーワードを簡単解説
最初に、ストックオプションの概要を解説します。
ストックオプションとは、「役職員等に対してあらかじめ決められた価格で、自社の株式を購入することができる権利」を指します。
会社の役職員等に対して、給与とは別に与えられる報酬の一種です。ストックオプションをもらった人は、将来会社の株価が上がったときに、事前に与えられた権利を行使して安く株を買い、その差額を利益として受け取ることができます。
ここで改めて、ストックオプションと同時によく聞く言葉を解説しましょう。
用語1:行使価額
ストックオプションを使って会社の株を購入する際に、あらかじめ決められている価格です。言い換えると、「将来、株をいくらで買えるか」を約束した金額を指します。
ストックオプションの価値は、この行使価額と、将来の株価の差によって決まります。行使価額が低ければ低いほど、将来株価が上がった際に大きな利益になります。
用語2:ストックオプションを行使する
あらかじめ定められた行使価額で、会社の株式を購入することです。
ストックオプションを行使するには、行使価額分の資金が必要です。
用語3:行使期間
ストックオプションを行使できる期間です。
ストックオプションの多くはいつでも行使できるわけではありません。多くの場合、ストックオプションが付与された日(発行日)から数年間と設定されています。この期間を過ぎると、ストックオプションの権利は失効します。企業によって契約内容が異なるため、必ず確認が必要です。
用語4:ベスティング
ストックオプションという「行使する権利」を獲得・確定するための条件を指します。
ストックオプションは、一般的に当事者間で行使を制限する条件が定められており、一定の条件を充たすと行使することができるようになります。
例えば、一定期間を過ぎると、段階的に権利が確定する仕組みを「クリフ・ベスティング」と呼びます。これは、ストックオプションが付与された日(発行日)または入社日などの一定の日を起点に、1年後に25%の権利が確定、2年後にさらに25%の権利が確定(合計50%の権利行使が可能)といったように、段階的に設定されている場合などがあります。
2. ストックオプションのメリット・デメリット
続いて、ストックオプションを付与されるとどんなメリットがあるのか、反対にどんなデメリットがあるのか(※1)解説していきます。
(※1:ここでは、ストックオプションを付与される役職員等にとってのメリット・デメリットを記載しております。)
<メリット>
①将来大きな利益を得られる可能性
・税制適格ストックオプションでは、行使価額よりも売却時の株価が大幅に上回れば、その分の差額がキャピタルゲイン(譲渡益)として利益になります。行使価額は基本的に低く設定されているため、行使価額より株価の方が高くなる可能性が高いです。
②モチベーションの向上
・自身の行動が、会社の成長や株価上昇に直結し、ひいては大きな報酬として還元されることを意味します。これにより、高いモチベーションの維持や強いオーナーシップ(当事者意識)に繋がります。
③リスクテイクが不要
・万が一、株価が権利行使価額を下回った場合も、権利を行使しなければ良いだけなので、役職員等が金銭的な損失を被ることはありません(※ただし有償SOを除く)。
<デメリット>
①価値がゼロになる可能性
・株価が行使価額を下回れば、そもそもストックオプションの価値がなくなります。せっかく付与された権利も無価値のまま失効し、一切の利益を得ることができません。
また、退職後はストックオプションを持ち出せないケースがほとんどです。退職後についてはベスティング等により権利行使が可能となっていないことが多く、株式に転換されていないストックオプションは、無価値のまま失効します。
②新たなキャリア機会を逃す可能性
・将来大きな利益が出る可能性を期待して、人生設計に組み込んでしまうのはリスクがあります。また、期待値の高さゆえ、本来であれば別の会社に移っていたかもしれないキャリアの機会を逃す可能性もあります。
③社内の人間関係への影響
・社内では、付与された人とされていない人がいる可能性があります。もし付与された場合には、その事実を公表すると、社内やチーム内での人間関係に影響するかもしれません。
④資金負担のリスク
・権利を行使して株式を取得するためには、行使価額分のまとまった資金が必要になります。株価が大幅に上昇していても、この資金がなければ権利を行使することができません。
資金不足を解決する方法として、証券担保ローンといった手段が挙げられますが、留意点もあるため注意が必要です。下記のTipsにて、証券担保ローンについても触れています。
3.未上場企業で働く方へ:ストックオプションの「活用方法」
ストックオプションを単なる『権利』ではなく、『自分の将来の資産を築くためのツール』として使いこなすために、従業員は何をすれば良いのでしょうか。
単なる『権利』として受け取った場合、ストックオプションを行使するタイミングやそれにかかる費用、税金についても把握できず、いざという時に使えない(現金化できない)といったリスクがあります。
ここでは、ストックオプションを受動的ではなく、能動的に理解を深めていく方法を解説します。
<役職員等に出来ること>
①会社の成長に貢献する
・何よりも重要なことです。会社の成長が、ストックオプションの価値を高めるからです。
②上場後に向けて、行使に必要な資金を貯めておく
・行使に資金が必要なケースについては先にも記載しましたが、特に税制非適格の場合は税金についても調べておく(※2)のが良いでしょう。
(※2:税金については行使時の株価が不明のため、正確な金額を事前に出すことはできません。また、給与所得に対する税率は、他の所得や扶養家族の有無によっても変わるため、個人によって変動します。おおよその金額を試算することは可能です。)
③どのタイミングで行使・売却するか、シミュレーションする
・②の試算で算出した「必要な資金」をいつまでに、どうやって貯めるのかを検討します。会社の成長を見越して、どのタイミングで売却するのが一番利益を最大化出来るのかを検討します。税理士や弁護士に相談することもお勧めです。
Tips.もし行使価額が高額で、現金を用意できない場合はどうすれば良い?
行使価額が高過ぎて、資金を現金で用意できない……スタートアップではよくあることです。その場合に考えられる解決策は下記になります。
<証券担保ローン>
これは、「ストックオプションやストックオプションを行使して得た株式を担保にして、行使に必要な資金を借り入れる」方法です。
銀行や専門の金融機関が、ストックオプションを行使して得た株式を担保として、行使に必要な資金を融資します。
現金を用意する必要がなく、もし株価が下落してローンの返済ができなくなっても、担保である株式などを差し出すだけで済み、個人の他の資産にまで返済義務が及ばない点が最大の特徴です。融資を受けて取得した株式は、返済が完了するまでそのまま保有し続け、株式を売却して金銭となった場合にはその金銭から返済を行うこととなります。
4.最後に
本稿では、ストックオプションの基本について解説してきました。
ストックオプションは単なる給料の一部ではなく、会社の未来を築く仲間として、会社から期待されている証です。ぜひ、本シリーズでストックオプションに対する理解を深めて頂ければ幸いです。次回はストックオプションの行使について、より詳しく解説していきます。
その他にも、FUNDOORではストックオプションに関するお役立ちコンテンツを配信しております。是非、ご覧ください。
※本稿に記載のない留意事項もありますので、ご自身の状況に合わせて税理士や弁護士などの専門家に相談することを強く推奨いたします。
執筆:FUNDOOR
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