【TENTIAL酒井氏×クラス中島氏】意思決定のスピードとガバナンスを両立させるコツ<セミナー 2/3>
スタートアップの経営を加速するSaaS「FUNDOOR(ファンドア)」を運営する株式会社FUNDINNOでは、定期的に起業家向けセミナーを開催しています。今回は、「意思決定のスピードとガバナンスを両立させるコツ」と題して、オンラインセミナーを開催しました。
セミナーの内容を、3部に分けてお届けします。こちらは2本目の記事です。
本記事はFUNDOORの提供でお届けします。
目次:
・取締役会と経営会議の位置付け
モデレーター・安田氏:
皆さん、取締役会の他に経営会議、リーダー会議等、取締役会とは別に経営の会議体は置かれていますか?
TENTIAL・酒井氏:
そうですね。弊社はありますね。
モデレーター・安田氏:
例えば、経営会議と取締役会が、各社どのように定義づけられているかをまずお伺いしたいなと思っております。
というのも、私が前の会社を経営していた時、両方の会議の役割が重複していたり、取締役会の場合は外部の取締役やオブザーバーもいたりで、形式的な報告会になりがちだったりとか、色々と課題感を感じながらやっておりました。
二社ともどうやってやられてるのかなというのは、ぜひお伺いしたいなと思っています。まず、中島さん、どのような形で運営されているか伺ってもよろしいですか?
クラス・中島氏:
正直、試行錯誤しながら切り分けは行っておりまして、参加者の観点から取締役会と経営会議に分けて行っているものの、同日に続けて行っております。
昔は参加者などはあまり気にせず、どちらかというと一同に会して話すことを優先していたのですが、社外役員選任などを見据えて柔軟に変更しております。
モデレーター・安田氏:
現状は参加メンバーも7〜8割は同じメンバーで運用しているフェーズで、今まさに行動を変化させていく段階ということですね。
酒井さん、現状はどのような形で運用されてますか?
TENTIAL・酒井氏:
そうですね。弊社の場合は、監査等委員会設置会社にもなって、取締役は社内が2人、社外が4人なんですよ。そういった形で比較的、経営と執行の分離といいますか、そういったことが出来つつあるかなと思っています。
なので、取締役会は経営のモニタリングの場じゃないですけれども、執行側が説明を尽くして、それで問題が無ければそれはそれでいいし、そこで議論が起きたらちゃんと議論する。そういった場にできているかなと思ってます。
反対に、経営会議、弊社では経営定例と呼んでるんですけれども、そちらの会議に関しては、執行同士で喧々諤々議論しています。「これが良い、これが悪い」の意思決定と、あとはみんなで議論することで、判断基準を一つにするというのもあると思います。
みんなで「こういう時は、こういう判断をするんだよね」という共通認識を持つ場。今のはサブ的な話ですけれども、そういった場になってるかなと思います。
モデレーター・安田氏:
経営会議は何名ぐらいでやられていますか?
TENTIAL・酒井氏:
経営会議は今、人数が多いですね。気づいたら20人ぐらいになっちゃいますね(笑)
モデレーター・安田氏:
多いですね! その場合、各所管のリーダークラスとか、マネージャークラスが入ってきているのでしょうか?
TENTIAL・酒井氏:
そうですね、こういうのってだんだん人数が膨らんでいくんですよね(笑)
・監査等委員会設置会社のビフォー・アフター
モデレーター・安田氏:
TENTIALさんは、今年から監査等委員会設置会社になったと思うのですが、ビフォー・アフターで言うと、何か変化はございましたか?
TENTIAL・酒井氏:
そうですね。ビフォーは少しモニタリング機能として弱かったかなと思います。しっかりと監査等委員の皆さんが、監査等委員会の中で各議案について事前にディスカッションをしておりますので、我々もそこに向けて説明を尽くすという形が取れてるかなと思っています。
これは監査役会設置会社でも同様のことが起きると思います。やはり社外役員が増えたり、監査と名のつくような方が増えたということは、ガバナンス強化に繋がったと感じますね。
モデレーター・安田氏:
なるほど。経営会議のあり方も、その体制変更に合わせて変化したりしますか?
TENTIAL・酒井氏:
そうですね。正直、経営会議の位置づけを定義できたのって確か今年入ってからか、去年の末ぐらいなんですよね。これまでは柔軟に色々運用するためにというのもありましたが、今年、監査等委員会ができたことで定義する必要性が増しました。
変わってきたか?と言われたら、変わったかなと思います。会社のフェーズが大きくなったのも、影響として大きいかもしれないですけど。
モデレーター・安田氏:
そういうことですね、面白いですね。今日お話を伺って思ったのは、両社ともに、取締役会も経営会議を置いてはいるものの、意思決定の基準は、明確で会社の方針と共に職務権限規程もあり、各個人にしっかりと権限委譲は進んできていると。また、それを諮るような形の経営会議という構造、特にTENTIALさんはその色が濃いのかなと思いました。
クラスさんも経営会議で合議で決めるというよりは、一つ一つが基準に基づいて決まっていて、それを経営会議でみんなで目線合わせをしていく、そのような意味合いが強いですか?
クラス・中島氏:
おっしゃる通りですね。弊社も結構色々変わってきていますね。本当に初期の数人の時とかは、採用の状況や案件の状況など細かいところを見ていく感じでした。
少し大きくなってからは事業進捗を議論するために、経営会議とまた別に会議体を作って、それぞれの各事業が今週どうだったかと、来週はこういうアクションをやっていきますと、それに対して代表から質問、意見をするというのを全社オープンの場でやっていました。
そのようなオープンな会議と経営会議を別に行っておりましたが、やっていくとすみ分けが難しくなってくるので、位置づけやアジェンダは適宜見直しを図っておりまして。
予実管理についても、もっと深めていかないといけないよねっていうフェーズになってきて。各部との予実状況の話をする会議体を作って、経営会議でも議論して、前述の全社オープンの場のものを無くしたりですとか。色々と試行錯誤でやっている感じですね。
モデレーター・安田氏:
試行錯誤って重要ですよね。試行錯誤のスパンって、切り替える時はすぐ切り替えたりしますか? どのようなタイミングで切り替わっていきます?
クラス・中島氏:
課題感が出てきて「これどうする?」ってなった時に「じゃあもう来週からやめようよ」と、そういうパターンもありますね。
モデレーター・安田氏:
凄い早さですね。
クラス・中島氏:
常に変化させていくことは意識しておりますが、振り返ると半年くらいで会議体は変わってたりします。
モデレーター・安田氏:
やはり、成長するベンチャーはしっかりと変化しているということですね。とても面白くて、ついつい深堀りし過ぎてしまいました(笑)
・代表の意見と敢えて逆の意見を持つことも
モデレーター・安田氏:
続いて、事業のピボットのような大きな意思決定について、どのように決定してきたか事例を伺っていきましょうか。酒井さん、いかがでしょうか?
TENTIAL・酒井氏:
そうですね、それで言うと、CEOの言うことには、一定のリスペクトを持って受け止めています。
特に、ピボットのような大きな意思決定と言うのは、やはり代表の意見が色濃く出るかなと思いますし、大きな意思決定だからこそ、最後は代表が腹を決めてくれた方がやりやすいですね。その上で、経営会議や、取締役に諮っています。
モデレーター・安田氏:
面白いですね。例えばそういう時に メンバーからしっかりとしたフィードバックが発生するのか、それともここはもう代表の判断で行こうみたいな雰囲気になるのかで言うと、どちらでしょうか?
TENTIAL・酒井氏:
それで言うと、僕はときに逆の意見を持つようにしてディベートをするようにしています。代表取締役がこう言っているけど、こういう視点もあるんじゃない?っていうのを当てるようにしていて。
その中で議論も深まって、みんなの納得感を得ていって。実際に私の意見が最終的に選ばれることもあるのかもしれないですが、最終的にはより納得感の高い、会社全体で一丸となれる意思決定にするっていうことを意識していますね。
モデレーター・安田氏:
やっぱり、代表との関係性が重要なんでしょうね。中島さんは、どうですか?
大きいピボット、私は知る限りあまりしていらっしゃらないと思うのですが。
クラス・中島氏:
そうですね。大きなところは無いと思います。あるとすれば、弊社の法人向けサービスは多種多様な業態の会社にニーズがあるなと感じている中で、どこのドメインに注力するかについては、意思決定があったかなと思っております。
モデレーター・安田氏:
代表がメッセージを発信しているのか、それとも下から意見が上がってくるような感じなのでしょうか?
クラス・中島氏:
その時は数字については私が弾いていたので、エコノミクスを見て「この業態に注力した方がいいのではないか」とか話しながら、最後は代表が決めると言う感じでしたね。
モデレーター・安田氏:
戦術・戦略レベルのレイヤーでもベクトルが違うかもしれないですね。お二人ともありがとうございます。
・資金調達の意思決定はどう進める?
モデレーター・安田氏:
では続いて、ファイナンスに関する意思決定についてお伺いします。初期のエクイティでの資金調達は、代表・創業者・オーナー…これらの経営株主が意思決定に絡む場面が、色濃いんじゃないかなと思うところがありまして、資金調達が得意なCEOもいれば、得意な人に任せるCEOもいて、色んなパターンがあると思います。
モデレーター・安田氏:
酒井さんも中島さんも、かなりファイナンス周りは強い経歴かと思います。お二人から見て、それぞれがどのようにCEOや経営陣の方と連携し、特にエクイティの資金調達を進めてきたかを伺いたいなと思っています。では、中島さんはいかがですか?
クラス・中島氏:
そうですね。最近私は資金調達から離れていて、戦略財務を担当しているので、割と初期の頃の話になってしまうんですけれども。
弊社の代表はシリアルアントレプレナーなので、二度目の起業ということで、一社目でも自分で資金調達はしていたので、正直一人でも結構調達ができちゃうようなタイプではありました。なので、最初の頃2人で調達に動いていた頃は、ピッチで代表がしゃべって、その後の裏のロジは私がやっていて、基本的には代表を中心に回っていく、そんな動き方をしていましたね。
モデレーター・安田氏:
なるほど。代表が既にファイナンスに明るい方で、どんどん進めていったと。中島さんは代表をしっかりサポートしてきたっていたという感じですね。
バリューや希薄化率等も、代表が戦略を決めていた感じでしょうか?
クラス・中島氏:
そうですね。 一応、会話とかもちろんしてはいるものの、最終的には代表が決めると言いますか、放出割合も一般的な数値でしたし。
モデレーター・安田氏:
大きく外れたことはしてこないですもんね。ありがとうございます。
酒井さん、TENTIALさんはどのような形で調達されてきました?
TENTIAL・酒井氏:
そうですね。まず、基本的には私がリードはするんですけれども、ファイナンスの大きな方向性、バリエーションいくらぐらいで、いくら調達して、エクイティストーリーの骨は何にするのか、と言うのは、やはり代表と話した方針で進めてきたと思います。
代表と言いつつ、大株主の一人ではあるので、大株主の意向をしっかりと意識してきたと言う方が近いかもしれないですね。
モデレーター・安田氏:
なるほど。ファイナンスの責任者として酒井さんがいらっしゃって、代表とは、大株主とのコミュニケーションの意味合いでこういう風に資本政策を考えていくよっていう雰囲気ですね。
TENTIAL・酒井氏:
おっしゃる通りですね。うまく行くにせよ、行かないにせよ、やはり資本政策においては、大株主である代表取締役が納得した状態じゃないといけないなと思っていました。
ただ、実際に動いてみると、このエクイティストーリーだと上手く調達できないよねとか、もうちょっとバリュエーションは下げたほうがいいよね、という調整は出てくるので、代表の意向を聞きながら、私のほうで投資家の声は直接聞いて、フィードバックループを回して資金調達を具体的にしていく、そういう動き方でしたね。
モデレーター・安田氏:
TENTIALさんの場合は、例えば投資家へのピッチとか打ち合わせも、基本的には酒井さんが実施されるという役割分担でしょうか?
TENTIAL・酒井氏:
そうですね、基本的に私が出て行きましたね。やはり、代表には事業に集中してほしいという部分と、彼自身も事業に集中したいという部分があっての私の役割だったと思うので、そこは阿吽の呼吸で、そういった形になりましたね。
・アーリーとレイターの資金調達の違い
モデレーター・安田氏:
面白いです。今、両社で特徴的な色が出たなと思って、トップでファイナンスが明るくて自分で引っ張って、初期のファイナンスもクリアしている場合。逆に事業に集中するために適任者に任せて、任された側が大株主(代表)と調整して設計していくというパターン。後者のパターンも、代表が自分自身を俯瞰できて冷静にストーリーを作れるから良いかもしれないなと、感じました。
これ、CFOの方に結構勉強になる良い視点ですね。
TENTIAL・酒井氏:
ありがとうございます。あと、もう一個あるのは、レイターステージに関してはCFOがリードしないといけないなと思う部分がありまして。
ファイナンスもこれまで上手くやれてきたからこそ、会社が存続してるわけですけれども、初期のファイナンスにおける、勝ちパターンとか成功体験っていうのがレイターでは活きないなという部分はあると思っていますと。
やっぱり初期って人売りじゃないですけど、創業者にベットすることが多いかなと思います。レイターになればなるほど、イグジットでどう見えるんだっけ?とか、トラクションも初期とは全然違う求められ方をする、利益がどれだけ出てますか?のような見られ方をする。
ベットするものが人から企業に変わっていくので、事業のファイナンスは、やはりCFOの方が得意であるべきだと思うし、得意であれば対応するべきだっていう感覚ですね。
モデレーター・安田氏:
なるほど。初期からステージが変わることで、売り物が変わるってことですよね。人や組織を売るのであれば、、事実、CEOが組織を引っ張ってるしフィットすると。
他方、事業を売るのであれば、「事業のセールスパーソンはCFO」というようなイメージですね。
クラス・中島氏:
弊社も同じ感覚です。業種や規模感によって変わるところだと思いますが、レイターになるにつれ、より業務ボリュームや専門性も変わってくることから、管理業務とファイナンス業務の両方を対応するのは難しくなってくるので、役割は変えていかないといけないなと感じてました。
モデレーター・安田氏:
本当に、面白いですね。このように変わっていけるというのが、何よりも強いんだろうな。本当に伸びているスタートアップは本当にそこなんでしょうね。きちんとステージごとに何をやるべきか、皆合意の上で、スムーズにトランスフォーメーションを起こしていると。今のお話を聞いて、改めて変化が重要だなと思いましたね。
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今回の記事は、ここまでになります。
スタートアップの経営を加速するSaaS「FUNDOOR」は、株式会社FUNDINNOが提供しています。株主総会や取締役会のDXをサポートしています。
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次回は、ヒト・モノ・カネの中でもヒトに関する意思決定基準についてお話を聞いていきます。
執筆・編集:猪狩千尋
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