【TENTIAL酒井氏×クラス中島氏】意思決定のスピードとガバナンスを両立させるコツ<セミナー 1/3>
スタートアップの経営を加速するSaaS「FUNDOOR(ファンドア)」を運営する株式会社FUNDINNOでは、定期的に起業家向けセミナーを開催しています。今回は、「意思決定のスピードとガバナンスを両立させるコツ」と題して、オンラインセミナーを開催しました。
セミナーの内容を、3部に分けてお届けします。こちらは1本目の記事です。
本記事はFUNDOORの提供でお届けします。
目次:
司会:
それでは、セミナーを開始させていただきます。司会・進行を務めさせていただきます、(株)FUNDINNOの猪狩と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
本日のテーマは、スライドに記載の通り、「スタートアップの意思決定プロセスとガバナンスの両立させるコツ」についてです。
ご登壇いただくのは、株式会社TENTIALの酒井 亮輔さんと株式会社クラスの中島 悠太さんのお二人です。また、オペレーターはフレンズ株式会社の代表取締役・安田瑞希さんにご担当いただきます。
本日は、お二人にパネルディスカッション方式でお話をお伺いします。たっぷり質問をご用意しておりますので、最後までお楽しみください。セミナー最後に、来月開催のイベントもご紹介させていただければと思っております。
では、本日の登壇者の皆様のプロフィールを簡単にご紹介してから、安田さんにバトンタッチしたいと思います。(以下、紹介スライドにて説明を割愛)
・各登壇企業の事業紹介
モデレーター・安田氏:
猪狩さん、ありがとうございます。本日は素敵なゲストをお二人、お招きしています。何より私自身がこのセミナーをとても楽しみにしていました。まずは、お二人の事業紹介から始めていきたいと思います。それでは、酒井さんからTENTIALの事業内容を簡単に紹介していただきます。 酒井さん、どうぞよろしくお願いいたします。
TENTIAL・酒井氏:
株式会社TENTIAL CFOの酒井と申します。弊社は、「健康に前向きな社会を作り、人類のポテンシャルを引き出す」をミッションに掲げているウェルネス系のスタートアップです。
特に、弊社が得意としているのは、ブランド事業になります。今日私が着ているウェアも弊社で作っているものなのですが、一番よく売れているのが「BAKUNEリカバリーウェア」というというシリーズです。こちらが飛ぶように売れていまして、販売枚数も20万枚を突破しました。
その他にも枕、マットレス、毛布など寝具類、働く身体のために作った身軽なアパレル「MIGARU」、リカバリーサンダルやインソールなどフットケア製品など多岐にわたる商品を扱っております。
弊社の行った一番最初の事業は何かと言うと、実はメディア事業です。そこから色々進化していって、今のブランド事業になったということで、本日はその辺りのお話もできればなと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
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TENTIAL Webサイト https://tential.jp/
(※このURLから遷移するサイトはFUNDOORのものではありません。)
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モデレーター・安田氏:
はい、ありがとうございます。実は、弊社のデザイナーもTENTIALのウェアを使っているんですよ。今日このセミナーに登壇するという話をしたら、かなり興奮していました。私も使ってみたいです。
今日のテーマに関連するところで面白いなと思ったのは、メディアから現事業にピボットされた点です。その変化の中でどうやって意思決定が変わってきたのか、深掘りできればと思いました。
それでは、次に中島さんからクラスの事業内容を簡単に紹介していただきます。中島さん、どうぞよろしくお願いいたします。
クラス・中島氏:
はい、よろしくお願いいたします。クラスの中島と申します。弊社は「“暮らす”を自由に、軽やかに」というビジョンを掲げておりまして、持続可能な循環型社会に向け「持たない、捨てない社会」を目指しております。
現在は、家具や家電を中心とした耐久財のサブスクリプションサービスを提供しております。
個人の方向けにはECサイトを展開しており、商品毎に月額レンタル料金が設定され、好きなタイミングでいつでも返却できるようになっております。
法人の方で言うと、こちらも色々な展開はしているのですが、大きなところで言うと、モデルルームに入れさせていただいたり、オフィスではテレブースなどの貸出需要が増えております。
弊社の特徴は、裏側のシステム面、在庫管理のシステムや基幹システムも全て内省化してやっていたりですとか、物流面はリペアを含めた循環型のオペレーションを構築していたり、社内でバリューチェーン全体をカバーしているところが特徴的だと思います。
本日はその辺りも含めてお話しできればと思います。
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CLAS 個人のお客様向けサイト:https://clas.style/
CLAS 法人のお客様向けサイト:https://clas.style/biz/
(※このURLから遷移するサイトはFUNDOORのものではありません。)
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・各社の今のフェーズ
モデレーター・安田氏:
ありがとうございます。クラスの創業者の方はとても有名ですし、事業・オペレーション領域もとても広いですよね。物も動かしているし、システム開発もしているし。どのようにカルチャーを統一し、意思決定を行っているのかについても興味があります。
それでは、今回その2社をお迎えしてお話いただくテーマについて、まずはテーマの背景から簡単にご説明します。
スライドに書かせていただいている通りで、スタートアップは、初期は初期で課題がありますし、拡大期は拡大期で課題ありというところです。特に今回のセミナーで着目しているのは、意思決定です。意思決定とガバナンス。
モデレーター・安田氏:
初期はどのように意思決定していくか、スピード優先かもしれません。しかしながら、拡大期は拡大期でガバナンスのバランスの取り方も変わっていくと思います。今回のキーワードは「変革」だと思っていて、両者からどのように変革してきたのかとか、お話をお伺いしたいと思います。
具体的には、3部構成でお話をお伺いできればなと思っています。パート1は、ヒト・モノ・カネにおいてスタートアップがどのように意思決定してきたか、 それぞれ事例を交えながら、お話をお伺いできたらなと思います。
パート2は、会社が大きくなるにつれ、情報の共有や透明性の担保、株主向け、従業員向け、 何か意識されていることを聞いてみたいなと思っています。
また、パート3では、やっておいてよかったこと、やっておけばよかったなと思っているところなど、お伺いできればと思っております。
モデレーター・安田氏:
お二人のお話をいただく前に、もう1個だけ前提条件を確認させていただきます。 現在のTENTIALさん、クラスさんの事業フェーズ、そして、参考にフレンズについてもまとめております。こちらを頭に置きながら両者の話を聞いていただくと、とても立体的に各社の状況がわかるんじゃないかと思っています。
TENTIALさんもクラスさんも、大体シリーズC位で、社員数も80〜90人ですね。組織がどんどん拡大している状況のお二人なんで、お互い、気になるところも是非、聞いていただきたいなと思っています。
両社とも取締役会設置会社でして、TENTIALさんは監査等委員会も設置しております。経営会議の運営方法も、代表の決済事項の諮問っていう形であったり、上位レイヤーの参加であったり、ここも特徴が出ていますね。その他、従業員規模感、株主数、働き方と記載いただいています。
※上記は2023年10月時点での情報です。
モデレーター・安田氏:
酒井さん、中島さん、この中でそれぞれ「ここはちょっと特徴的かな」と思うところがあれば、1つずつシェアいただけるとありがたいです。まずは酒井さん、いかがでしょうか?
TENTIAL・酒井氏:
はい、ありがとうございます。弊社の経営会議は、少し特徴的かなという風に思っていますね。経営会議の立ち位置って、会社によってそれぞれだと思いますが、弊社の場合は、職務権限表をパキッとしっかり定義していて、毎回経営会議で意思決定すると逆にスピード感が落ちちゃうなというところがあります。
なので、なるべくスピード感を落とさないために、代表取締役で決済できること自体は一定確保しておいて、ただ社内的にしっかりガバナンスを効かせるという意味で、決裁事項に関して一部経営会議で諮問されるといった環境ですね。
それが、スピードとガバナンスを両立する上で、この経営会議のやり方が良いかなという風に思っています。
モデレーター・安田氏:
面白いですね。まさに次のテーマのど真ん中なので、この後、ぜひ深掘りさせてください。
続いてクラスさん、特徴的な点があれば教えていただけますか?
クラス・中島氏:
ありがとうございます。まだ弊社は監査役会や監査等委員会は設置してないフェーズなので、社外の役員はそこまでまだ多くないのが現状です。あとは、経営会議の決裁事項も変えたりしていて、そこはTENTIALさんと通じるところがあるのかなと思いました。
モデレーター・安田氏:
クラスさんも面白いですね。この後、経営会議を深掘りするパートで、ぜひ詳しく聞かせてください。
それでは、次のテーマに移りましょう。スタートアップはどのように意思決定しているのか、各社の事例から学んでいきます。
・意思決定の基準は、ミッション・ビジョン・バリュー
モデレーター・安田氏:
まず、意思決定はヒト・モノ・カネに分けられると思いますが、まずは、事業回りの意思決定をどのようにされているかをお伺いしたいと思います。まず、大前提として各社にどのような意思決定の考え方や方針があるのか、お聞きしたいと思います。
酒井さん、お願いします。
TENTIAL・酒井氏:
そうですね、撤退基準はありますが、明確に事業の進出基準がパキッと決まっている訳ではなく、個別の事情に応じて是々非々で判断するっていうのが、あると思います。
ただ、ミッション・ビジョン・バリューにどれくらい従っているかどうかが軸になっていますね。
そこがしっかりと、北極星のような形になっているか。そこが弊社の意思決定の、うまくいっている点かなと思っています。
モデレーター・安田氏:
ありがとうございます。なるほど、ミッション・ビジョン・バリューは、一般的にある程度粒度が荒いイメージもあるんですが、それを基に結構意思決定できると言うことは、TENTIALの皆さんはもう慣れてるというか、訓練されているという感じでしょうか。
TENTIAL・酒井氏:
そうですね、一定訓練されているのと、結構無理やり当てこんでやっている部分はありますね。とはいえ、さすがに「そこに合わないよね」っていうものはしっかりと弾かれる、ネガティブチェックぐらいには、少なくともバリューのようなものは効いてるかなというように思ってます。
モデレーター・安田氏:
なるほど、大方針の中でそれに当てはまるかどうかはしっかりとスクリーニングされているし、みんな慣れてきているという感じですね。
クラスさんはどのようなルールがございますか?
クラス・中島氏:
そうですね、ビジョンから外れないか、お客様のためになっているかは結構話として上がってきますね。もちろん、内容やレイヤーによって変わるところはありますが、大前提的な話で言うと、そういうところはあるのかなと思います。
モデレーター・安田氏:
今回、両社とも、私の理解が間違えていたら申し訳ないですが、toC向けプロダクトを両社とも作られているし、クラスさんの場合、toBのサービスもあるかもしれないですけど、基本的には、ユーザーとしては個人だと思うのですが、どれくらいカスタマーを強く意識されていますか?
TENTIAL・酒井氏:
お客様の位置づけ自体は強いと思います。ただ、やはり中長期の成長で見た時に、例えば価格改定のようなお客様の体験に少し反する部分っていうのはどうしても出てくるので、そこはバランスが必要ですよね。
むしろお客様中心とずっと言い続けると、それはそれで間違った意思決定と言いますか、中長期で当社がグロースできないと、結局お客様に十分な価値を届けられなくなるという意識があります。
・職務権限規程を整備し始めたタイミング
モデレーター・安田氏:
なるほど。弊社も、意思決定の時って誰が決めるのかの「WHO」と、どのように決めるかの「HOW」、この2つの軸でよく考えています。その「WHO」の観点でいくと皆さんの企業フェーズの場合、CEOが全て決めるのではなく他の人に権限委譲もされているのかなと思います。
その辺の現状と、従業員規模が何人くらいのフェーズで変化が起きたのかをお伺いしたいです。まず、酒井さんはいかがですか?
TENTIAL・酒井氏:
そうですね。権限委譲は、私が入社した十人ぐらいの時から少しずつできていたかなと思いますけれども。とはいえ、「これって代表に聞かないといけないんだっけ?」「いや、これ部長で行けるんだっけ?」みたいなものは残っていて。非常に曖昧だったんですね。
なので、私が入社して比較的すぐに職務権限規程を作りました。表形式のものですね。「こういう内容はこの人々が決議できる、この人が決裁できる」みたいな。そういった表をしっかりと作った瞬間から、本当の意味で権限委譲ができるようになったかなと思います。
モデレーター・安田氏:
当時10人位のタイミングで、もう職務権限規程を整理したんですね。
TENTIAL・酒井氏:
10から20人ぐらいのタイミングだったと思いますね。
モデレーター・安田氏:
中島さんは、いかがでしたでしょうか?誰が決めるか、という点で。
クラス・中島氏:
今は同じように職務権限規程を作ってはいるのですが、私が作ったタイミングが大体従業員数が7〜80人ぐらいのところで、今振り返ると少し遅かったなっていう感覚はありますね。一時期、誰が決めるのかとか、若干ふわっとしていた時期はあったと思います。
元々代表のスタンスとしては「任せる」というのを念頭に置いていたので、初期の頃から権限移譲は意識をしていました。
ただ、どこまでが委譲されてどこまでが決めるのかは、正直、個別判断の部分も多かったと思います。弊社の場合ですと、従業員数が4〜50人から一気に90人位に増えたので、その過程で作ったイメージですね。
モデレーター・安田氏:
なるほど。40人ぐらいまで人数が増えてきて、その時は「さすがにもう作んなきゃいけないよね」となったのでしょうか? どのように組織のマインドが変化したのでしょうか?
クラス・中島氏:
100人の壁や、組織の壁という観点から、バックキャスティング(*1)で考えていて。100人まで来るとさすがに必要と思いつつ、50人規模ではまだいけるかなと当時思っていました。ただ、当時採用のスピードも速く、一気に人数が増えたこともあるので、それを踏まえるともう少し早めに着手してもよかったかなと思います。
※1:バックキャスティング:
最初に目標とする未来像を描き、次にその未来像を実現する道筋を未来から現在へとさかのぼって記述する、シナリオ作成の手法です。現在を始点として未来を探索するフォアキャスティングと対置されます。(Beyond Our Planetより引用 https://www.rd.ntt/se/media/article/0022.html)
・組織の壁とどう向き合ったのか
モデレーター・安田氏:
面白いですね。なるほど。従業員数40人ぐらいで権限委譲が曖昧な場合、何か問題は起きたりするものでしょうか?
クラス・中島氏:
クリティカルな問題はなかったなと思います。ただ、各所から「これって代表に承認を取った方がいいか?」と個別の相談が結構くることもありまして、私からは「これは経営会議に上げましょう」とか「これは代表決裁で進めましょう」というのは度々ありましたね。
モデレーター・安田氏:
なるほど、ちなみに酒井さんは、10人から20人で設計されたと伺いました。そうすると、その後50人くらいの組織の壁のタイミングで、比較的スムーズに突破できたイメージはございますか? もしくは、何か別の問題が出てきたのか、お伺いしたいです。
TENTIAL・酒井氏:
比較的スムーズにやれたかなと思います。意思決定が社長に溜まったり、委譲しすぎたりと小さい問題は起きますが、その時々で職務権限表をメンテナンスして、それに合わせてワークフローも変えてきました。
モデレーター・安田氏:
職務権限規定を適宜アップデートしていくというマインドがあったのですね。この点、例えば、規程って一回作ると比較的そのまま放置しちゃうパターンの会社も多いんじゃないかなと。私も昔そうだったんですけど。
組織として「常に変化していける」のは重要だと思いますが、、そのマインドと言いますか、メンテナンスし続けようと思えたのは何故でしょう?
TENTIAL・酒井氏:
それで言うとですね、比較的弊社は職務権限表に則って、ちゃんとワークフローを回していたんですよ。
ちゃんとワークフローを回していると、結局、代表取締役の決裁事項がとても多くなってしまって、代表取締役が音を上げるという現象が起きるので「じゃあここは権限委譲にしましょうか?」といった形で少しずつ改善がされていきましたね。
モデレーター・安田氏:
なるほど、面白いですね。今のお話を聞いて、中島さんはいかがですか?
クラス・中島氏:
弊社は当時、属人的だったかなと思っていて。私自身は上場準備の観点で「権限に沿ってやらなきゃ」「これ凄く大変だな、そもそもこの決裁いるんだっけ?」という気づきから、権限の変更をしていましたが、組織として変更するような仕組みがあったかというと、そこはあまり出てこなかったかなと思いますね。
モデレーター・安田氏:
いずれにせよ、やはり決裁が代表に集中してきて、それによる組織の活動とかボトルネックを解消するために、権限委譲をすると。そして、それをいかに先手を打って進めていくかということですね。先手で対策を打てていると、しっかりと組織の壁を越えていけるっていう。そういう共通項はあるんだろうなと感じました。そう考えると、TENTIALさんは事前対応が早かったという印象を持ちました。
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今回の記事は、ここまでになります。
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執筆・編集:猪狩千尋
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