【TENTIAL酒井氏×クラス中島氏】意思決定のスピードとガバナンスを両立させるコツ<セミナー 3/3>
スタートアップの経営を加速するSaaS「FUNDOOR(ファンドア)」を運営する株式会社FUNDINNOでは、定期的に起業家向けセミナーを開催しています。今回は、「意思決定のスピードとガバナンスを両立させるコツ」と題して、オンラインセミナーを開催しました。
セミナーの内容を、3部に分けてお届けします。こちらは3本目の記事です。
本記事はFUNDOORの提供でお届けします。
目次:
・投資家とのコミュニケーション
モデレーター・安田氏:
もう一つお伺いしたいなと。既存株主さん、例えば一番最初のラウンドで入った投資家さんとのその後のコミュニケーションは、どの程度気を遣っていたかとか、その後の調達の意思決定にどれくらい影響を与えているものなのかでいうと、いかがですか?
TENTIAL・酒井氏:
そうですね。弊社の場合は基本的に任せてくださっていました。ただ、こちらからの要望としてフォローオンしてほしいとか、いざとなった時にリードをとってほしいとか、そういったコミュニケーションを密にしていましたね。
モデレーター・安田氏:
なるほど、しっかりそこをやってきたと。中島さんはいかがですか?
クラス・中島氏:
弊社も、基本的には任せていただいておりますね。リードVCの方とは基本的に毎月定例で話をしているので、資金調達以外も含めて事業の状況とか、こういうのをちょっと手伝ってほしいとかお話をしていますね。
そのタイミングで資金調達の動きを相談したりですとか、何かあればフィードバックいただくようなコミュニケーションですね。
モデレーター・安田氏:
二社とも苦労もされていると思いますけど、順調に成長してきているので、その辺りのコミュニケーションは密にやられているし、スムーズそうな印象を勝手ながら受けました。ありがとうございます。
時間も押しているので、人材のパートに行きましょうか。次、人材です。特に、私が今回お伺いしたいのは、人の採用基準や評価の基準をどのように作り上げてきたのか、です。
モデレーター・安田氏:
例えば、誰を採用する等の基準についてお伺いしたいです。また、基準作りにどう向き合ってきたかについても伺いたいと思います。酒井さん、いかがでしょうか?
TENTIAL・酒井氏:
そうですね。正直、ここはあまり変わったことはやっていないかなと。ミッション・ビジョン・バリューに沿っているかということと、あとは自分より凄い人を取るじゃないですけど、よりレベルの高い人を再生産していくっていうこと。当たり前ではありますけど、当たり前のことをやるっていうことは、意識しているかなと思います。
モデレーター・安田氏:
酒井さんがジョインされたタイミングでは、そのような文化や考え方も出来上がっていた印象ですか?
TENTIAL・酒井氏:
考え方は出来上がっていましたね。それをどうフレームワークに落としていくか、具体的なチェックリストにするかという所はどんどん変遷していますね。
モデレーター・安田氏:
なるほど。例えば組織が10人から7〜80人になっていく中で、ドラスティックに変わったタイミングがあるのか、それとも常に、発展してきている、といった感じなのか、いかがですか?
TENTIAL・酒井氏:
そうですね、例えば明確に評価制度ができた瞬間っていうのはそれに近かったと思いますね。ただ、元々暗黙的に考えていたことを、しっかりと形にしただけではあるので、そういう意味ではドラスティックな変化ではなかったのかもしれないです。
モデレーター・安田氏:
TENTIALさんの職務分掌規程ができたタイミングは、早いなという印象があります。例えば、採用とか人事評価が明確に基準として作られたのは、職務権限規程と同じようなタイミングでしたでしょうか?
TENTIAL・酒井氏:
同じぐらいの時期ですね。20名とか、それぐらいだったと思います。
・創業時から一貫した人事評価軸
モデレーター・安田氏:
中島さんはいかがですか?
クラス・中島氏:
弊社も、人事評価制度っていう意味で言うと、社員数で恐らく10人以内の時に作りました。なんなら、私が入ってすぐのミッションが人事評価を作るというのがあって。
その時は、正直細かく作りこまれたものでは無かったと思いますが、何を評価するかはその時から大きく変わっていないと思っています。成果軸とバリュー行動の2軸なのですが、その軸は変わっていなくて。採用も基本的に「バリューに沿っているか?」というのは、創業当時からずっとありました。
とはいえ、冒頭で少しお話したように、物流をやっていたり、自社でオリジナル家具を作っていたりするので、家具の知見を持っているとか、物流系やエンジニア、初期の頃は結構専門的に持っている方を意識的に採用していたと思います。
そこは急拡大しているタイミングで、もっとポータブルなスキルの方を採用した方が良かったのかなとか、今思うとあったりはするんですけど。ベースのバリューは変わらずですが、具体的な対応基準というか、誰を採用するか、等は工夫のしようはあったのかなと思う点です。
モデレーター・安田氏:
冒頭の事業のお話もありましたけど、サプライチェーンというかバリューチェーンのカバレッジが大きいビジネスをされていますよね。そうすると、職種ごとに優秀な人材を採用しようと思ったときに、職種ごとの給与水準に、差が出てくるんじゃないかなと。それこそエンジニアは少し高めかもしれないし、サプライチェーンのオペレーションの仕事は、価値があっても、業界水準は低かったりして。
同じテーブルで報酬設計しにくいというのが、一般的に悩みでありそうですが、その辺りはいかがですか?すごく難しそうだなと感じていて。
クラス・中島氏:
おっしゃる通りで、本当に難しいですよね。いくつかテーブルは作っているんですけれども。人数割合によっては別で作るのも違うよなと思いつつも、同じ基準でいいのか、などは結構悩んでいました。
業務内容によっては、業務委託やアルバイトなど勤務形態も適したものがあったりするので、そこから考えていかないと結構設計が難しいなっていうところで。変数が多いのは、すごく悩ましい所です。
モデレーター・安田氏:
人事の評価や正社員採用という枠の中で考えるだけではなくて、雇用形態も含めて複合的に考えて、色々な事業を色々な職種と組み合わせていくなど、試行錯誤されていますね。
両社とも一定の基準を初期から作っていて、それを変化させている所が共通しています。その中で難易度が高い領域もありますが、スムーズにやれていると感じました。
・コアパーソンの採用方法
モデレーター・安田氏:
最後に、人材関連で質問があるのですが、スタートアップはコアメンバーを一本釣りで採用する事例が多いと思いますが、どの層の方が活躍して動いているイメージありますか?
トップが引っ張ってくるのか、それとも全員が動いているのか。それぞれの会社にお伺いしたいです。まずは酒井さん、いかがですか?
TENTIAL・酒井氏:
そこには課題がありますね。ロングリスト・ショートリストを作って引っ張ってくるようにしないといけないと思うのですが、それはやりきれてなくて。基本的に何が上手くハマっているかで言うと、弊社はtoCのビジネスなので、会社を知っていただきやすく、自社サイトから応募してくる方が増えてきているのはありがたいことです。
モデレーター・安田氏:
会社の名前とか、プロダクトが売れていくと、それがそのまま採用にも繋がると。ありがとうございます。中島さんはいかがですか?
クラス・中島氏:
いや、まさにですね。少し先を見てどういう人が必要かの要件定義からその人にどうアプローチして、魅力づけをするのか。バイネームで考える方法もしていく必要があるかなと思ったりします。
モデレーター・安田氏:
リストを作って、コア人材はスカウトというか、ヘッドハンティングしていくしかないんですね。そのように感じ始めたのは、人数が一定量増えてきてからでしょうか?
TENTIAL・酒井氏:
いや、それで言うと、常時ですね。常に課題感としてはあるけど、なぜか分からないけど、後回しになっちゃう部分はありますね。頭の中にリストぐらいは、社長も私も持ってたりするんですけど。
モデレーター・安田氏:
なるほど。ここはスタートアップ共通の課題感がありそうですね。私も今30人ぐらいですが、常にマネジメント層の採用ミッションを頭に置いています。でも、戦略的に動けているかっていうと、そうじゃないところもあって。
強引にでもOKRとか、自分の業務ミッションに入れておかないと、ついつい後回しになりますね。分かります。
・情報の共有と透明性の担保
モデレーター・安田氏:
パート1が終わったので、パート2に行きたいと思います。
端的に、この辺を注意しているよという点があれば、教えていただきたいです。情報の共有について、株主向け・ステークホルダー向けと、社内向けで会社が大きくなるにつれてどのような変化があったのか。では、酒井さんからお願いします。
TENTIAL・酒井氏:
弊社はとにかくオープンにしているところですかね。取締役会も今、オブザーバー権がある方がほとんどですし、非常に透明性高く運営できているポイントかと思っています。
モデレーター・安田氏:
オブザーバー権を積極的に渡して、どんどんオープンにするというのは、最初からやっておくと良いかもしれないですね。
TENTIAL・酒井氏:
結果として、個別の株主定例を開催せずに済んでいるので、効率的だと思います。
モデレーター・安田氏:
結果、マネジメントコストの差が出るんですね。オブザーバー権を付与することに躊躇するかもしれないですが、もうどんどん付与しておいた方が良いのかもしれないですね。
中島さん、いかがですか?
クラス・中島氏:
株主向けについては、基本的に同じような話ではあります。
社内向けも基本的には同じで 先ほどの酒井さんの経営会議の話じゃないですけど、オープンにすることは意識しています。社内のやり取りも、なるべくオープンチャンネルでやりましょうと。
特に初期の頃とか結構DM比率とか見ていたりもしたのですが。CTOも初期の頃からずっと「オープンに、オープンに」と言っていましたね。
モデレーター・安田氏:
酒井さんも中島さんも、基本的には、マネジメントの情報は従業員にもフルオープンみたいな形の方針ですか? どのような形で情報を管理されていますか?
TENTIAL・酒井氏:
概ね、フルオープンですね。当然、秘匿すべきこととか、取締役会の内容とかは出してないですけど、基本出しています。
モデレーター・安田氏:
80人ぐらいの組織規模になってきて、社員の皆さんはそういう情報に積極的にアクセスしてくれるものですか? 機会があれば、アクセスするような感じでしょうか?
TENTIAL・酒井氏:
正直、そこまでアクセスしていないと思いますが、アクセスを閉じると、それはそれで不満に繋がると思うので。
モデレーター・安田氏:
基本的にはオープンにしている方向性なんですね。
情報の透明性を担保しておくというのは、スタートアップは最初からやっておくと良いのかもしれないですね。途中から変えていこうとすると、色々なハレーションが起こりそうです。
・あの時こうしておけば良かった、と思うこと
モデレーター・安田氏:
最後に、あの時こうしておけば良かった、これはやっていて良かった、それぞれ何か一つずつエピソードをシェアいただけるものがあれば、お願いします。酒井さん、いかがですか?
TENTIAL・酒井氏:
やっていて良かった点で言うと、さっきも話に上がりましたが、半歩先の準備をするっていうのは凄く良かったかなと思っています。それこそ内部監査人を入れたりとか、監査等委員会への移行だったりとか、ちょっと早いですねって言われるぐらいだったんですけど、それがむしろ安定感に繋がっていると思うので、これは非常にやっといて良かったなと思ってるとこですね。
あと、DE&Iですね。DE&I委員会を作ったりとか、こういうのも早いと思いますね。
やれば良かった点で言うと、宣伝っぽくなりますが、それこそFUNDOORのようなサービスをきちんと入れておけば良かったなって凄く思っていて。
これは結構本当に思っていて、途中からもう出来上がったフォーマットでやり始めると、もう変えるのが怖いんですよ。現状維持バイアスみたいなものが働くので。絶対に使った方が効率的なんですけど、やれてないっていうのはありますね。色々な審査やらを見据え始めると、わざわざいまの安定したプロセスを捨てるの?みたいな話になってしまうので、早いうちに効率的なSaaSを入れた方が良いと思います。
モデレーター・安田氏:
今聞いていて思ったのが、TENTIALさんのように上手く変化してきた会社でも、攻めの部分というか、どんどん変えていくんだけど、守りの部分ってそれでもやっぱり変えにくさっていうのはあるんだろうなと感じました。
会社規模が大きくなっていて、IPOの準備とか始まる中で、やっぱり変えにくいくなる。その前に早めに対応しておくと、生産性の高い状況で流れていくってことなんですね。ありがとうございます。
中島さんからもやっておけば良かった点、教えてください。
クラス・中島氏:
やってて良かった観点でいうと、規模が拡大したときにぐちゃっとしていると大変になりそうなものを、事前にケア出来ていたかなと思います。
特に弊社の場合は在庫を持っているので、在庫管理について後から修正するというのが非常に大変になるのはイメージ出来ていたので、抑えないといけないところを早めに対応出来ていたかなと思います。
フェーズを考えて、やりすぎないようにしつつ、将来の負債が大きくならないようにというバランスが非常に難しいなと思っております。
モデレーター・安田氏:
なるほど、ありがとうございます。本当はもっと深堀りしたかったんですが、そろそろお時間となってしまいました。
・終わりに
モデレーター・安田氏:
最後になりますが、本当に素敵なゲストに参加していただいているので、今日の感想とか、各社から何かお伝えしたいことがあれば、一言ずついただいて、今日は締めるという形にいたしましょうか。ではまず酒井さん、一言お願いします。
TENTIAL・酒井氏:
そうですね、ベンチャーもフェーズが進んでいくにつれ、色々な「負債」がどうしても溜まっていくと。なので、早いうちに、本当に少なくとも半歩早く、なんなら一歩早く、色々な準備をしていった方が良いかなと思います。
それこそ職務権限表だったりとか、一見すると「作るの面倒臭いな…」と思うんですけど、作った方が最終的に効率は良いし、スケールしやすくなるんですよね。
なので、しっかりと早いタイミングから、次のフェーズを見越したアクションっていうのをやっていくのが非常に重要かなと思います。本日はありがとうございました。
モデレーター・安田氏:
ありがとうございます。素晴らしい。では、中島さんからも一言お願いします。
クラス・中島氏:
私も半歩先とか見ながらやってはいるものの、本当に変化が激しすぎるので、前提として変化するものだということで、作っていく必要がありますよね。固執してしまうと、柔軟に変化できない部分もあると思うので、そこが一番重要なポイントかと思います。
一つでも参考になれば幸いです。本日はありがとうございました。
モデレーター・安田氏:
素晴らしい。ありがとうございました。とても勉強になりました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
今回の記事は、ここまでになります。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
スタートアップの経営を加速するSaaS「FUNDOOR」は、株式会社FUNDINNOが提供しています。株主総会や取締役会のDXをサポートしています。
無料でも一部機能をご利用いただけます。
執筆・編集:猪狩千尋
東京都港区芝5-29-11
Contact