株主総会議事録の書き方とは? 概要、作成方法から記載例まで徹底解説
株主総会を開催した際には、必ず議事録を作成し、保管する必要があります。
株主総会の議事録には原則として押印の義務はありませんが、定款に定められている場合や、取締役会非設置会社が株主総会で代表取締役の選定をしたときには、押印が必要です。
株主総会の議事録への実際の記載例についても紹介します。
<目次>
1. 株主総会の議事録とは?概要・必要性について |
1. 株主総会の議事録とは?概要・必要性について
株式会社は、株主総会を開催した際、会社法第318条第1項の規定により、必ず議事録を作成する必要があります。(*1)
株主総会議事録は、定時株主総会や臨時株主総会といった株主総会の種別にかかわらず、書面または電磁的記録の形式で作成することが義務付けられています。(*2)
また、作成した議事録は、本店に10年間、その写しを支店に5年間保管する必要があります。(*3)これらの保管期間に違反すると、罰則の対象となる可能性もあるため注意が必要です。
*1 会社法第318条第1項、*2 会社法施行規則第72条第2項、*3 会社法318条第2、3項
2. 株主総会議事録の押印について
株主総会議事録には、以下の場合を除き、原則として、記名押印の義務はありません。しかし、後々のトラブルを避けるため、出席した取締役員による記名押印が推奨されています。株主総会議事録への押印が必要となるケースは以下の通りです。
2-1. 定款に定めがあるとき
定款において、株主総会議事録に出席した議長や取締役が記名押印または電子署名をすると定められている場合、押印が必要になります。特に、定款に印鑑が実印と定められている場合は、実印で押印します。
2-2. 株主総会で代表取締役の選定をしたとき
取締役会非設置会社では、株主総会で代表取締役を選定することができます。この場合、議事録には議長及び出席した取締役全員が実印で押印した上で、2週間以内に登記を行う必要があります。(*4)
ただし、従来の代表取締役が次の代表取締役を選定する株主総会に出席し、議事録に会社印を押印した場合は、他の取締役全員の押印を省略することができます。(*5)
押印の要否については、各企業の定款や株主総会の実際の議事内容により異なるため、具体的なケースごとに専門家に相談することをおすすめします。
*4 会社法第349条第3項、*5 商業登記規則第61条第6項但し書き、法務局HP
3. 議事録の作成方法・記載事項
株主総会議事録の作成では、次の記載事項を網羅する必要があります。(*6)
一 株主総会が開催された日時及び場所(当該場所に存しない取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役。第四号において同じ。)、執行役、会計参与、監査役、会計監査人又は株主が株主総会に出席をした場合における当該出席の方法を含む。)
二 株主総会の議事の経過の要領及びその結果
三 次に掲げる規定により株主総会において述べられた意見又は発言があるときは、その意見又は発言の内容の概要
(中略)
四 株主総会に出席した取締役、執行役、会計参与、監査役又は会計監査人の氏名又は名称
五 株主総会の議長が存するときは、議長の氏名
六 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名
また、書面決議(みなし決議)での決議の省略、報告の省略があった場合は、株主全員の同意の記録と、以下の記載事項が必要です。(*7)
(1)省略した報告または決議の内容
(2)(書面・みなし決議の場合のみ)提案した者の氏名
(3)株主総会での報告または決議があったものとみなされた日
(4)議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名
*6 会社法施行規則第72条第3項、*7 会社法第319条、第320条
書面決議(みなし決議)での決議の省略、報告の省略について、詳しくはこちらの記事「株主総会の書面決議・委任状とは? 〜株主総会決議の便利な省略方法を解説〜」をご覧ください。 |
4. 株主総会議事録の記載例
以下は、定時株主総会で、役員報酬(定期同額給与)の変更を決議した場合の議事録の記載例です。
この事例は登記が不要な議案であり、実印での押印義務はありません。
なお、役員報酬(定期同額給与)の変更は、原則として事業年度開始日から3ヶ月以内に行う必要があります。
これは法人税法上、役員報酬は定期同額給与などの一定のルールに則る場合にのみ損金(経費)として扱われるためです。定期同額給与では、事業年度はじめに決めた額の役員報酬を事業年度末まで支払います。(*8)
そのため、役員報酬(定期同額給与)を増額または減額したい場合、例えば4月1日が事業年度開始日であれば、6月30日までに株主総会で役員報酬(定期同額給与)の変更を決議する必要があります。
〇〇株式会社 定時株主総会議事録 1. 日時 2023年6月1日 自9時30分 至10時00分 2. 場所 株式会社〇〇本社 3. 発行済株式総数 〇〇株 4. 議決権を行使することができる株主総数 5名 その議決権の総数 10,000 5. 出席株主 5名(委任状による出席を含む) その議決権の数 10,000 6. 議長 代表取締役〇〇 7. 出席取締役 出席した取締役の氏名を記入 以上の出席により、本総会は適法に成立したので、開会の旨を宣し、次の議案の審議に入った。 【報告・決議事項】 第1号議案 計算書類承認及び決算・事業報告の件 監査役〇〇は、下記書類を綿密に調査したところ、いずれも正確かつ適正であることを認めた旨を報告した。 貸借対照表 損益計算書 株主資本等変動計算書 個別注記表 出席株主は、別段の異議なく、満場一致で承認可決した。 第2号議案 役員報酬改定の件 代表取締役 月額 〇〇円 変更の時期 令和5年7月支給分より 第3号議案 取締役及び監査役の任期満了による改選に関する件 議長は、取締役及び監査役の全員が本定時総会の終結と同時に任期満了し退任することになるので、その改選の必要がある旨を述べ、その選任方法を諮ったところ、出席株主中から議長の指名に一任したいとの発言があり、一同これを承認したので、議長は下記の者をそれぞれ指名し、これらの者につきその可否を議場に諮ったところ、満場一致でこれに賛成したので、下記の通り再任5人することを承認可決した。 取締役 〇〇 取締役 〇〇 取締役 〇〇 取締役 〇〇 監査役 〇〇 議長は、上記議案について詳細を説明し、承認を求めたところ、出席株主は、原案に異議なく、満場一致の賛成で承認可決した。 以上をもって本総会の議案全部を終了したので、議長は閉会の旨を宣し、10時00分、散会した。 以上の経過の要領および決議を明確にするため、議長 代表取締役〇〇及び出席役員はこの議事録を作成し、署名押印する。 2023年6月1日 株式会社〇〇 定時株主総会 議長 代表取締役〇〇 ㊞ 取締役 〇〇 ㊞ 取締役 〇〇 ㊞ 取締役 〇〇 ㊞ 取締役 〇〇 ㊞ 監査役 〇〇 ㊞ |
*8 法人税法第34条
5. 株主総会の議事録を電子化する方法
近年、ペーパーレス化が進む中で、株主総会の議事録も電子化する動きが増えています。電子化は書類の保管コストを削減し、効率的に管理する手段となりますが、法律や実務上の注意点を押さえておく必要があります。
株主総会議事録の電子化は、会社法第318条および関連する会社法施行規則により、電磁的記録での作成が認められています。(*9)そのため、議事録を紙媒体ではなく、PDFやWordファイル形式で保存することが可能です。
*9 会社法318条第2項
株主総会の議事録を電子化するメリット
株主総会議事録の電子化には、下記3つのメリットが挙げられます。
1. コスト削減
紙や印刷物の保管にかかるコストが不要になります。
2. 検索性の向上
議事録をデジタル化することで、特定の内容を検索で見つけることができるようになります。そのため、取締役などから過去の議事録について問い合わせが来た際もすぐに対応することができます。
3. 効率的な共有
議事録を共有する際に印刷をする必要がなく、メールやクラウドなどで簡単に共有することができます。
株主総会の議事録を電子化する場合の注意点
電子化にはメリットがある半面、下記のような点には注意が必要です。
1. 改ざん防止措置
議事録を電子化した際は、後から改ざんされた疑いを防ぐため、タイムスタンプの付与や、電子署名を利用して記録が正しいことを証明する必要があります。
2. 保管期間の遵守
電子化された議事録であっても、紙で作成した場合と同様に、本店で10年間、支店で5年間の保管が義務付けられています。クラウドストレージを利用する場合、法律に定められた期間中は削除しないよう管理しましょう。
3. データのバックアップ
議事録のデータが紛失または破損した場合のリスクを考慮し、複数箇所でのバックアップ保存を行うことが推奨されます。
株主総会の議事録を電子化することで、業務効率を大幅に向上させることができます。ただし、法律や実務に則った管理が求められるため、専門家に相談するなど事前に十分な準備を行いましょう。
【関連コラム】
株主総会の電子化に関する間違った解釈とは? 〜非上場会社の株主総会オンライン化に関するよくある勘違いを解説〜
6.まとめ
本記事では、株主総会議事録の書き方や作成方法、記載例について紹介しました。議事録の作成や保管は法律で定められていますので、ルールをよく理解してペーパーレス化や効率化を進められると良いでしょう。
FUNDOORでは、弁護士監修の「株主総会機能」を使ってオンラインにて開催の準備から議事録の作成まで完結することができます。定時株主総会・臨時株主総会・種類株主総会のほか、議案についても普通決議・特別決議に対応した雛形を用意しており、議事録を自動で作成することができます。
過去に開催した株主総会の資料もFUNDOORに蓄積することができるため、議事録の保管にも適しており、実務の効率化・DXにも役立ちます。各実務のDXはもちろん、ガバナンス強化のために運用フローを見直されている方も、まずはお気軽にご相談ください。
【お役立ち資料をダウンロードする】
「3分でわかる!FUNDOOR株主総会」
反社チェックもFUNDOORで
コンプライアンスを厳守した株主管理と投資家管理をFUNDOORで実現
上場審査時や、投資・融資を受ける場合には、会社が反社会的勢力との関わりがないか厳しくチェックが行われます。
株主、投資家、従業員、取引先などについて反社チェックを行い、意図せぬリスクを避けましょう。
反社チェックについて詳細は下記をご覧ください。
「反社チェックとは?スタートアップに求められるガバナンスとその背景を解説!」
FUNDOORについての詳細・デモ依頼は下記よりご確認ください。
https://fundoor.com/
FUNDOORについての詳細・デモ依頼は下記よりご確認ください。
https://fundoor.com/
執筆:FUNDOOR
監修:当社関係弁護士監修 ※法人名、個人名に関しましては、直接のお問い合わせを避けるため非公開とさせていただきます。
東京都港区芝5-29-11
Contact