取締役会の開催、と一口に言っても、参加者の確認から招集通知の作成、取締役会の開催、議事録の作成・押印、情報集約に至るまで、様々な細かい作業が発生します。
また、株主総会よりも開催頻度が高く、議事録の保管が煩雑になるケースもあります。
本記事は、取締役会議事録の押印実務に焦点をあて、注意点や「よくある質問」をまとめました。未上場企業で取締役会を設置されている会社、若しくはこれから設置を検討されている会社の方向けの内容となっております。
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目次:
1.取締役会議事録の押印義務とは?
2.取締役会議事録への電子署名 〜どのような場合に電子署名が可能?〜
3.FUNDOORの取締役会機能における、取締役会議事録への電子署名
4.実務における「よくある質問(FAQ)」を徹底解説
Q1.取締役会議事録への押印は、シャチハタでの押印は有効でしょうか?
Q2.取締役会議事録への押印を拒否された場合は、どのように対応すれば良いでしょうか?
Q3.取締役会への欠席者は、議事録への押印が必要なのでしょうか?
Q4.取締役会議事録への押印の順番は決まっていますか?
Q5.取締役会決議を省略した(みなし決議の)場合、どのような議事録を作成すれば良いでしょうか?
Q6.取締役会議事録に電子押印する場合の、注意点はありますか?
5.まとめ
1.取締役会議事録の押印義務とは?
取締役会設置会社では、3ヶ月に1回以上、取締役会を開催することが義務付けられています。(会社法第363条第2項)
開催に伴い取締役会議事録の作成も義務付けられており、議事録が書面をもって作成されている場合には、出席した取締役及び監査役が、署名または記名押印しなければなりません。(会社法第369条第3項)
また、取締役会議事録が書面ではなく電磁的記録をもって作成されている場合、法務省令で定める署名または記名押印に代わる措置を取る必要があります。(会社法369条第4項)
2.取締役会議事録への電子署名 〜どのような場合に電子署名が可能?〜
リモートワークが普及した現在、取締役会議事録への押印も書面(紙)ではなく、電子での署名を検討されている企業も多いのではないでしょうか?
書面で作成した議事録を印刷し、各役員に確認・押印をして回るのは手間もかかります。電子署名をメールなどで押印依頼することで、依頼する事務局側、対応する役員側の時間を大幅に削減することも可能です。
上述の通り、電子署名での押印については会社法369条第4項で、『法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない』と規定されています。
この「法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置」とは、具体的にどのような措置を指しているのでしょうか?
ここでいう「法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置」は「電子署名」とするとされており、「電子署名」とは、電磁的記録に記録することができる情報について行われる措置であって、当該情報が当該措置を行った者の作成にかかるものであることを示すためのものであり、かつ、当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること、つまり、「電子文書が本人の意思によって作成され、作成後改ざんされていないことを証明するもの」とされています。(会社法施行規則第225条第1項、第2項)
3.FUNDOORの取締役会機能における、取締役会議事録への電子署名
経営管理プラットフォーム「FUNDOOR(ファンドア)」が提供している取締役会機能では、取締役会議事録への電子署名が可能です。
実際の画面はこのようになっています▼
(記事掲載時点での画面となります。予告なく変更する場合がありますので、ご了承ください)
電子署名のシステムは、株式会社NXワンビシアーカイブズが提供する電子契約・契約管理サービス「WAN-Sign」の認印版を搭載しています。
WAN-Signに対する法務省の認定リリースはこちらをご覧ください。
その他、FUNDOORの電子署名に関する詳細、利用における注意事項はこちらをご覧ください。
WAN-Signの署名申請・効力に関するQ&Aはこちらをご覧ください。
4.実務における「よくある質問(FAQ)」を徹底解説
Q1.取締役会議事録への押印は、シャチハタでの押印は有効でしょうか?
「書面(紙)への押印に、シャチハタ(スタンプ印、インキ浸透印)は有効か?」といった疑問を聞くこともありますが、シャチハタでの押印も有効です。しかし、既製品ということもあり同じ印影のスタンプが複数ある、押し方によって印影が変わるといった点から、法的書類では避けられるケースが多いでしょう。
また、代表取締役変更登記の添付書類として取締役会議事録を用いる場合など、実印が求められるケースもあるため注意が必要です。
Q2.取締役会議事録への押印を拒否された場合は、どのように対応すれば良いでしょうか?
法令上では、出席した取締役及び監査役は、取締役会議事録への署名又は記名押印する義務があります。(会社法第369条3項)
では、どのような場合に、取締役会議事録への押印が拒否される(あるいは押印ができない)のでしょうか? 下記に3つのケースを挙げました。
ケース1:取締役会議事録の記載内容が異なるため、押印を拒否された場合
取締役会議事録を再作成し、出席者全員に署名または記名押印をもらいます。
若しくは、訂正・修正箇所に二重線を引き、余白に「○字抹消、○字加筆」(○部分は文字数)と記入し、出席者全員の訂正印をもらうという方法もあります。
ケース2:特別な理由もなく押印拒否された場合
署名または記名押印を拒否した当該取締役の氏名を記入した上で、出席取締役の過半数の署名した議事録を作成するか、当該取締役の記名押印を受けられない事情を議事録に記載する等の方法が考えられます。
ケース3:入院、死亡などやむを得ない理由で押印できない場合
ケース2と同様の対応をすることが考えられます。
ケース2、ケース3の場合において、取締役会議事録を登記の申請で利用するにあたっては、その事情を書いた上申書の提出によって登記が受理されたケースも過去にはあります。専門家や管轄の法務局に相談されることをおすすめします。
スタートアップであれば役員変更も頻繁に発生する場合も考えられます。 過去に遡って退任した役員に押印してもらうのは非常に大変な作業ですので、タイムリーな対応を心がけましょう。
Q3.取締役会への欠席者は、議事録への押印が必要なのでしょうか?
出席した取締役や監査役の署名又は記名押印は会社法で規定されていますが、欠席者への規定はありません。よって、欠席者の署名押印は必要ないと考えられます(注1,2)。
※注意事項
1.取締役会では代理人による決議(代理人が出席し、欠席代理人の代わりに議決に加わること)は認められません。
2.また、取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その過半数をもって行うことが定められています。過半数を上回る割合を定款で定めている場合には、その割合以上の出席が必要です。(会社第369条) 定足数に満たない場合は、取締役会として認められないという点にも注意しましょう。
Q4.取締役会議事録への押印の順番は決まっていますか?
押印の順番に、法的な決まりはありません。
企業によっては、「回収できた順番で」としているケースもありますし、その企業の慣習に則って決まった順番に押印してもらっているというケースもあります。
取締役3名の場合で、社内役員が2名、社外役員1名、監査役1名となっているパターンでは、まずは社内役員に議事録を回覧し、続いて社外役員、最後に監査役に回覧するというケースがよく聞かれます。
Q5.取締役会決議を省略した(みなし決議の)場合、どのような議事録を作成すれば良いでしょうか?
<そもそも、みなし決議とは?>
取締役が全員現地に集まることなく、取締役会の決議があったものと同じ効力を得る方法があります。それは「みなし決議」と呼ばれる方法です。
みなし決議を行う場合には、予め定款への定めが必要となります。また、みなし決議によって可決する場合、監査役会設置会社においては監査役から異議が述べられないことが条件となります。(会社法第370条)
<みなし決議の際の議事録への記載事項>
記載事項は、下記の4つがで定められています。(会社法第369条第3項、会社法施行規則第101条第4項第1号)
・取締役会の決議があったものとみなされた事項の内容
・上記事項の提案をした取締役の氏名
・取締役会の決議があったものとみなされた日
・議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名
Q6.取締役会議事録に電子押印する場合の、注意点はありますか?
基本的に、取締役会議事録に電子署名を使用するのは問題ありませんが、登記申請の際に別対応が必要となるケース(例えば代表取締役選任の登記をする場合など)がありますのでご注意ください。必要に応じて、専門家にご相談ください。
その他のお役立ち情報はこちら▼
5.まとめ
取締役会議事録は、法務局に変更登記を申請する際に添付が必要になることがあります。
また、M&A時のデューデリジェンス(DD)の際や、株式上場(IPO)の準備段階での上場審査や監査対応の際に取締役会議事録の提出を求められるため、様々な場面で必要となることが想定されます。
押印に不備があった場合や、そもそもタイムリーに押印していなかった場合は、それらを遡って対応するのは非常に骨の折れる作業です。注意事項を踏まえた上で、抜け漏れなく押印実務を進めていきましょう。
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執筆:FUNDOOR 猪狩千尋
監修:当社関係弁護士監修 ※法人名、個人名に関しましては、直接のお問い合わせを避けるため非公開とさせていただきます。
担当弁護士からの一言コメント:
取締役会議事録への署名押印について、会社法上の要件として実施するものにおいては幅広く電子署名を用いることが許容されておりますが、商業登記法に基づいて実施される登記申請においてはこれが許容されるかどうかはケースバイケースであり、慎重に手続きを進める必要があります。
本稿に記載の無い留意点も多くありますので、必要に応じて専門家にご相談されて手続きを進めてください。