CEOが語る、資金調達と急成長する事業の裏側【Unito近藤氏】
今回は、「暮らしの最適化の追及」をパーパスに、「帰らない日は家賃がかからない」革新的な賃貸サービスを提供している株式会社Unito(ユニット)の代表取締役である近藤佑太朗(こんどう・ゆうたろう)氏にお話を伺いました。
本インタビュー記事では、起業に至った経緯から資金調達の手法、今後の展望まで詳しく伺いました。
<近藤佑太朗 氏 プロフィール> 株式会社Unito 創業者 兼 代表取締役 1994年11月生まれ。東京出身。東欧ルーマニア育ち。 幼少期の3年間、父の仕事の都合により東ヨーロッパのルーマニアで育つ。明治学院大学に入学し、クロアチア留学ではビジネススクール「ZSEM」にて観光学を勉強。その後国内スタートアップ「Airbnb Japan」で修行し、起業。 2020年2月総額1.2億円を調達し、帰らない日は家賃がかからない住まい「unito」を発表。 2022年には、総額2.5億円を調達し、東急と物件を共同開発するなど、さらに事業を拡大し、2023年には、三井不動産、文部科学省などとの協業を発表。大手不動産・政府関連団体との協業を繰り広げ、今の不動産業界を取り巻くキーパーソンを巻き込みながら、次の時代のあたりまえの暮らしを創る。 一般社団法人シェアリングエコノミー協会幹事/「EO Tokyo Central」GSEA推進担当理事/「新しい暮らし創出研究会」主催者/Makers University3期生/ ソフトバンクアカデミア12期生/EO主催 GSEA 日本2位 |
近藤さん:
私たち株式会社Unitoは、ブランド「unito(ユニット)」の下に、2つの事業を展開しています。2つの事業のまず1つ目は、「プラットフォーム事業」です。これは私たちが日本で展開している「帰らない日は家賃がかからない」賃貸を探せるプラットフォームです。
もう1つは「直営事業」で、自社でも物件の企画から開発・運営まで行っております。現在、全国で55施設、おおよそ450室のホテルレジデンスを運営しており、東京を中心に、全国各地で運営を行っています。
プラットフォーム事業、直営事業のどちらにも共通する「unito(ユニット)」の最大の特徴は、家賃は住んだ分だけの料金システム「リレント」です。都心での住まいを柔軟にし、必要な時に必要な分だけ利用できる体験を提供しています。
具体的には、賃貸の家賃という固定費を変動費に変えるという取り組みをしています。一般的に、賃貸に住む場合の家賃は1ヶ月単位で設定されていますが、私たちはこの「1ヶ月」を「何日間暮らしたか」という単位に変えています。つまり、利用した日数分だけの家賃が課金されるという仕組みです。
それだけでなく、都心での住まいとして最適な居住体験を追求し、料金だけでなく全ての住宅が家具や家電付きだったり、スムーズな契約・入居体験だったりと、「時々住む都心の住まい」として最適な体験設計を目指しています。詳しくは、弊社HPをぜひご覧ください。
起業に至った経緯
ー起業に至った経緯を教えてください。
近藤さん:
2017年に起業し、2020年から現在の事業を開始しました。以前はハードウェアの会社を運営し、そこでは、地方の閉鎖寸前の旅館や民宿を購入し、改修・収益化して売却するという事業を行っていました。
ビジネスは上手くいっていたのですが、当時からエクイティを入れていたので、今後の成長性や会社としての方針を鑑み、当時の事業は売却しました。会社自体は存続し、よりスケーラブルな現在の事業に転換したという経緯です。
そこから、今回の事業「unito」を始めた背景には、2つの原体験があります。
1つ目は、私が21歳から学生起業家として活動していたこと。起業当初は親に心配をかけまいと、何も告げていなかったので、家を借りる際の保証人もいませんでした。学生起業家は保証人がいないと、保証会社も落ちてしまうんですよね。
周囲からは「学生起業家ってかっこいい」などと、友人からも応援してもらっていましたし、投資家の方々からも応援していただいていましたが、残念ながら家を借りることはできず、シェアハウスに住むしかない状態でした。そこで、誰もが家を借りられるようにしたいと考えるようになりました。
2つ目の理由は、私が出張などで頻繁に家を不在にしていたことで、既存の家賃のシステムに対して疑問を抱いたからです。毎日住んでいる隣の家の人と、時々しか帰らない私。なぜ同じ月の30日全ての家賃を支払わなければならないのか、と疑問に思うようになりました。
資金調達について
ー続いて、御社の資金調達について詳しく教えてください。
エクイティ調達を初期から進めており、昨年、累計3億円調達のフェーズまで進んだとのことですが、その過程で何か特に困難だった点や前回と異なった点などはありましたか?
近藤さん:
実は、プレスリリースなどは配信していないのですが、今年の2月頃に調達を行い、現在累計で約5億円の資金調達をしています。
調達の過程で大変だったのは、本格的に調達を開始した昨年10月から年末までの3ヶ月間、市況が冷え切っていたことですね。特に11月からマーケットが落ち込み、12月はダウンラウンドIPOが続き、まさに冬の時代に突入したことを実感していました。私が起業をおこなってから最も厳しかった時期だったと思います。
毎週バリュエーションの目線が下がり続ける中、自分たちの目線は変わらないのですが、投資家の方々からの評価はどんどん厳しくなる、という状況に非常に難しさを感じていました。
未上場企業の評価は非常に変動しやすい、言い換えると「未上場企業の株価は生もの(なまもの)だな」と強く感じました。でも、本来は「生もの」では駄目なんですよね。
未上場企業だからこそバリュエーションに気をつけなければならないですし、値段をコントロールする主導権を持たなければならないと思っています。なにより、株価に対して適切な説明をつけて、投資家の方々に理解していただく必要があると思っています。
ーVCやCVCの方々などとコミュニケーションを重ねる上で工夫した点はありますか?
近藤さん:
これまでVCやCVC、上場企業の方々とも交流を重ねてきましたが、相手が上場企業の社長や会長、あるいは起業家、VCの金融専門家、または一般的なサラリーマン、どんな役職や経歴、またどのような働き方をされているかによって、話の進め方を変化させる必要があります。
多忙な方に対して、頻繁に連絡を取るよりも、情報を見やすい形で送ることが大切だと思っています。例えば、PDFで送ることが必ずしもベストだとも思っていなくて、PDFの代わりに、スクリーンショットを撮って画像としてメッセンジャーで送る、といった手段も有効かもしれません。相手に合わせた情報共有の仕方が大事だと思っています。
ー近藤さんは学生時代に起業されたとのことですが、その経緯や資金調達、さらには上場後の成長方法について解像度高くお話される姿を見ていて、その知識をどこでどのように身につけたのか教えていただきたいです。
近藤さん:
今思えば、私自身最初は理解できなかったことがたくさんあったなと思います。勢いでファイナンスに飛び込み、失敗も数多く経験してきました。しかし、そういった経験から、真剣さや危機感を学ぶことができました。
振り返ると、最初の知識量や、いわゆる"偏差値"はそれほど重要ではないと感じています。大事なのはどれだけ学んでいくかであり、成長思考は非常に重要だと思っています。成功している人々、特に私が尊敬し、助けてもらっているメンターたちを見て、その考えがさらに強くなりました。
CFOに就任してから、CFOの重要性を改めて感じていますが、一方で、自分でファイナンスをやる、という経験から学んだこと、だからこそ見えてくるものがあると実感しています。M&Aもしてきたので、財務DDも経験しましたね。これからも成長志向を持ち続け進んでいきたいと思っています。
ーありがとうございます。様々な経験を積み重ねてきたからこその、解像度の高さなのですね。勉強になります。
今後の事業展開
ー最後に、今後の事業展開についてお伺いしたいと思います。
どのような事業に進出していくのか、どのような点で収益性を向上させていくのか、お話しいただければ幸いです。
近藤さん:
現状、私たちの市場占有率はまだ0.025%程度に過ぎません。この数字を見ると、まだ伸びしろが大いにあり、成長の余地は十分にあると言えます。そこで私たちの方針は、新規事業を立ち上げるのではなく、既存の事業を伸ばすことに専念するというものです。キーワードとなるのは、事業の「内製化」と「多角化」です。
まず「事業の内製化」については既に実行しているものも多く、私たちは単にプラットフォームを運営しているだけではなく、自社の物件運営も行っているものを「内製化」し、清掃員を自社で雇用するというのも「内製化」にあたります。そういった垂直統合型の経営を目指していきたいと考えています。
次に「事業の多角化」という視点からは、隣接する業界へ進出するという可能性も考えられます。たとえば、今は「暮らし」に関する事業を展開していますが、その延長線上として宿泊業等への進出も考えられるでしょう。
優先順位としては、まず自社に関連する事業の内製化、つまり自社内で必要な業務を全て行うことを最優先とし、次に事業の多角化を行い、さまざまな事業がシナジーを生み出す状況を作り出すことです。その結果、私たちのビジネスモデルは他社からは真似できない、競争優位性の高いものになると考えています。「内製化×多角化」を超えて「複合化」することで、唯一無二のビジネスモデルを確立し、最前線で世界の暮らしの最適化を追求していきます。
最後に
本記事では、株式会社Unito 創業者 兼 代表取締役の近藤佑太朗さんの資金調達時の体験談をお届けしました。
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同社では新しい仲間を募集しています。採用情報は下記よりご覧ください。
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執筆:根本
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