CFOが語る、安心して攻めるための コーポレート・ガバナンス【TENTIAL 酒井氏】
今回は、「健康に前向きな社会を創り、人類のポテンシャルを引き出す。」をミッションに掲げ、ウェルネスブランドを展開する株式会社TENTIAL(以下、同社)の取締役CFO・酒井亮輔(さかい・りょうすけ)さんにお話しを伺いました。同社は2023年2月に10億円の資金調達を行っています。
本インタビューでは、CFOとして入社した経緯や現在の役割、直近の資金調達についてのお話を詳しく伺いました。
<酒井 亮輔 氏 プロフィール>
株式会社TENTIAL 取締役CFO
慶應義塾大学 環境情報学部卒業後、経営共創基盤(IGPI)に参画。成長戦略・事業計画策定を中心に、Fintech企業の与信モデル作成などにも従事。2016年マネーフォワードに入社、経営企画にて主に資金調達・M&Aに従事した後、分析組織の本部長、マーケティング部長など、データ経営の実装・実行を推進。2021年にTENTIALに参画し、CFOに就任。
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目次:
ー最初に、御社の事業内容についてお伺いできますか?
酒井さん:
本日は宜しくお願い致します。当社は、創業から6期目を迎え、ウェルネスブランド「TENTIAL」を運営しています。
元々はインソールから事業を始めましたが、現在ではフットウェアカテゴリーとワークカテゴリー、スリープカテゴリーの3つのカテゴリーで生活のさまざまな場面で使える商品を幅広く提供しています。
それら全てが「TENTIAL」ブランドとしての製品であり、我々はこれらを通じて様々なニーズに対応する会社です。
中長期的な視点で見ると、私たちは一般医療機器として認可されたウェアの販売も行っており、今後はさらにヘルスケアの領域へと進出していきたいと考えています。
私たちのミッションは、「健康に前向きな社会を創造し、人類のポテンシャルを引き出す」ことです。
ー酒井さんがCFOとして御社にジョインした経緯や背景を教えてください。
酒井さん:
当時は転職をあまり考えていなかったのですが、その中でもTENTIALは「面白いな」と思えた会社でした。
具体的には、特に実行力の部分等で自分に無いものを持っているなと。新型コロナウイルスが蔓延し始めた当初も、先駆けてマスクを販売し始めました。圧倒的なスピード感を持って仕事をする、そういう会社に行けば凄く面白そうだなと感じたので、入社を決めました。
安心して攻めるために必要な役割
ーCFOとして入社されたと思いますが、CEOの方との役割分担はどのようにされていますか?
酒井さん:
役割分担でいうと、私は守りの部分かなと思います。入社当時の状況は、サッカーで言えば全員がボールに向かって走っているようなもので、それは確かに実行力には繋がっていました。
しかし、同時にゴールを守ったり、戦況を踏まえてチームメンバーをバランス良く配置しなければなりません。全体を俯瞰して見る、そのような守りの役割を私が担当するようになりました。
ー今おっしゃっていただいた「守り」というと、コーポレート・ガバナンスや上場に向けた内部統制といったことが思い浮かびます。メンバーの配置とはどういうことなのでしょうか?
酒井さん:
メンバーの配置は、内部統制やコーポレート・ガバナンスとは少し異なると思います。当時は人事部門が不在だったため、評価制度を整備したり、インセンティブ設計を行ったり、必要な人員を確保するための採用活動を推進したりといった部分を私が担っていました。
また、内部統制やコーポレート・ガバナンスは企業が安心して攻めるためのものだと思います。
サッカーの例で考えると、全員が自由にボールに向かって攻めることができるのは、ゴールポストを守り、戦況を見る人がいるからです。
それと同様に、内部統制やコーポレート・ガバナンスも企業が安心して、のびのびとビジネスに取り組むためのものだと思います。それを整理し、保つことが私の役割だと感じています。
資金調達を振り返って
ー御社は今年の2月に10億円の調達をされていたと思いますが、これまでの調達と比べて特に大変だったことや大きく異なっていたことなどありましたか?
酒井さん:
これまでと異なった点は大きく2つあると思っていて、一つは市況ですね。マーケットの状況が芳しくなかったので、資金調達の難易度が上がっていたかと思います。
二つ目は、投資家の見るポイントの変化ですね。アーリーフェーズでは経営者の資質が重視されることもありますが、レイターステージではIPOに至るまでの時間やIPO時の評価など、他の要素が重視されます。
上場のエクイティストーリーと変わらないくらい、事業計画の蓋然性が求められるフェーズだと考えています。
ー難しい市況を乗り切る上でのポイントや、心掛けていた点があれば教えていただけますか?
酒井さん:
デットファイナンスとエクイティファイナンスを組み合わせることかなと思います。
いろんな資金調達のスタイルを活用したことで、希薄化を最小限に抑えつつ、必要な資金を調達することができたと考えられます。
ー今回の調達は上場のストーリーに近いとおっしゃっていましたが、これまでの調達と今回の調達のストーリーの違いはどのようなものでしたか?
酒井さん:
アーリーフェーズでは、大きなビジョンや壮大な計画が評価される傾向があります。
一方、レイターステージでは、既存事業の安定した成長とその伸び率と、中長期的にマーケットを拡大できるポテンシャルも求められます。
そのため、事業計画の蓋然性をしっかり打ち出していきました。
うまくいったこと・苦労したこと
ー今までシリーズを重ねてきて、沢山の投資家・株主とお話しされてきたかと思います。株主の方とコミュニケーションを取る上でやって良かったことや、良好な関係を築くためのポイントってございますか?
酒井さん:
私は積極的に事業の状況を開示するタイプです。株主の方に取締役会にも参加してもらいますし、そこで何も隠さずに常々状況をレポートしています。
これの良い所は、取締役会で伝える情報を等しく提供しているだけなので、追加の工数が発生しません。
また、透明性が高まることで投資家から任せてもらいやすくなるかと思います。信頼関係という観点から見ると、投資家と経営者間で透明性を確保することが最も重要だと思っています。
さらに、株主側から見ても、透明性の確保によって適切なアクションを取りやすくなると感じています。
ー透明性を担保していく上で、株主の方とのコミュニケーションに関してコストや大変さを感じている部分はありますか?
酒井さん:
取締役会の招集通知を送る際にCCで株主の方を入れるだけなので、あまりないですね。もちろん、株主総会を開くときは手間がかかりますが、日々の業務遂行という観点から見ると、大きな負担にはなっていません。
コーポレート・ガバナンスについて
ーここからはコーポレート・ガバナンスについてお伺いできればと思います。
先ほど、株主の方も取締役会に参加してもらっているとのお話がありましたが、取締役会の中で話し合われていることをもう少し詳しくお伺いできますか?
酒井さん:
決議事項や報告事項など、職務権限表に基づいた手続きを適切に行うことは重要です。ただ、それだけではなく、質の高い事業の状況のインプットと、それを踏まえたディスカッションを非常に重視しています。ディスカッションのテーマは、組織作りについての話から具体的な店舗の出店に関する話まで、その時々によります。
会議でどういう話をするかもそうですが、出来る限りディスカッションに多く時間を割くことを意識しています。
ー株主の方への説明の場と取締役会はどのように区別されているのでしょうか?
酒井さん:
株主間契約の一部として、オブザーバー権が付与され、株主の皆さんに取締役会へ参加して頂いています。
このとき、株主への説明の場と、取締役会を分けて別のトピックや深度で議論するというやり方もあるのかもしれませんが、私たちはそれでは意味がないと考えています。
透明性のある議論やプロセスを大切にし、社外取締役を含む全員でディスカッションを行い、方向性を決めています。
その過程を株主の皆さんにも開示することで、私たちの思考や決定のプロセスに対する信頼と安心感を得られると考えています。そのため、株主への説明と取締役会の議論は区別せず、1つの取締役会という会議体で行っています。
ー株主の方とのコミュニケーションや透明性の維持、ガバナンスに関して苦労したことはございますか?
酒井さん:
ファイナンス(資金調達)の際は関係者の数が増えるため、小さなトラブルは起きやすくなります。契約締結プロセスなどで、一社でもミスがあると、投資契約全体がスムーズに進まなくなる可能性があります。これは単純に関係者が増えることによるデメリットだと思います。
一方で、関係者が多いということは、その分、応援団も多いという考え方ができます。今ぐらいの数であれば、有り難いことの方が多いのかなと思います。
ー最初におっしゃっていた、内部統制やコーポレート・ガバナンスは安心して攻めるためにある、というのは一つキーワードだと思いました。具体的にどのようなことをされているのでしょうか?
酒井さん:
いわゆる「根回し」文化が強い企業では、効率性や透明性が失われる場合があります。
会話や調整が分散してしまい、必要な人に情報が伝わっていない、誰が承認するべきか不明瞭など、スピード感が落ちたり不安感を生じさせることがあるんじゃないかと思います。
他方、当社では職務権限表を明確に整備し、それに基づいたワークフローを導入しています。これにより、業務を進める際にはワークフローに従うだけで、誰がどの部分の責任を持つかが明確になります。
口頭での確認や根回しは必要なく、正式な承認プロセスを経れば、その決定は会社として認められたものとなります。
ワークフローの整備などをしっかりやることで、心理的安全性や会社のスピード感を担保することができると思っています。
最後に
本記事では、株式会社TENTIAL 取締役CFOの酒井亮輔さんの、資金調達時の体験談をお届けしました。
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執筆:あいだ
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