【弁護士×連続起業家による対談】J-KISSでの資金調達について知る<前編>
クラウド経営管理ソフト「FUNDOOR」を展開する株式会社FUNDINNOでは、定期的に起業家向けセミナーを開催しています。今回は「連続起業家がJ-KISSでの資金調達についてVC経験弁護士に徹底的に聞く」と題して、オンラインセミナーを開催しました。登壇者は連続起業家の安田瑞希さんと弁護士・ニューヨーク州弁護士の西口健太さんです。
セミナーを前編・後編に分けてお届けします。
目次:
・普通株・種類株・J-KISSの違い
・エンジェル・シード期の調達方法とは
・最近増えている、J-KISSの考察
・次のラウンドでの株式転換について
・条件変更で登記が難しくなることも
・J-KISSで投資家に有利な項目とは
・バリュエーションキャップとディスカウント
・株主管理で大変だったこと
・最後に
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普通株・種類株・J-KISSの違い
西口さん:スタートアップが資金調達する時って借入であったり、エクイティファイナンスであったりいくつか手段があると思うんですけど、エクイティファイナンスが借入と違うのは、まず返さなくてもいいというところです。
その代わりに、会社の持分である株式を投資家に渡すということになります。なので、創業したときは創業者が大体100%とか株式を持ってるんですけど、エクイティファイナンスを経るにつれて、だんだん持株数が減っていくので、創業者の持株数が減りすぎないように注意する必要があります。
株式を投資家に渡すということは、経営に一部関与してもらうことになりますので、投資家とは長い付き合いになります。なので、誰にどのくらい渡すのかはぜひ慎重に考えてほしいですね。
安田さん:実務でまず出てくるのが、普通株と種類株の2種類。資金調達するとなると概ね種類株の話がすぐ出てくるんですけど、なぜみんなそこにフォーカスするのでしょうか。結局、企業側の便宜なのか、投資家の便宜なのか。起業家として種類株をどう位置付けて、理解しておいた方が良いのか。種類株、実務上どういう種類がよく使われているのか……その辺りを、今日、西口さんにお伺いしたいと思ってます。
西口さん:まず普通株は何も条件がついていない普通の株式です。種類株式は優先株式と言ったりしますけど、いろいろな条件がつけられます。基本的には、投資家を保護するためにいろいろ条件をつけられたのが種類株式。投資家のリスクを減らすために作られているものです。
一方で、種類株式で資金調達することはスタートアップ側にもメリットがあります。投資家は種類株式で保護されているからこそ、リスクをとって投資しやすい。普通株式よりも種類株式の方がバリュエーションが高くなりやすい。スタートアップとしてはより資金調達しやすくなるっていうメリットがありますね。
安田さん:起業家に有利な種類株式が発行されるケースはありますか?
西口さん:種類株式といってもいろいろな条件が設定されていて、それぞれの条件について色んな組み合わせがあるのでなかなか難しいですが、条件ごとにマーケットスタンダードと比べてスタートアップに有利・不利という判断をします。
安田さん:一つの種類株式に色んな条件が色々組み合わさって設計されていると。各項目で、「これは起業家寄り」「これは投資家保護の観点で書かれている」という複雑な設計がされている、というイメージなのでしょうか?
西口さん:仰る通りです。なので、項目ごとに「これってマーケットスタンダードと比べてどうかな」という検討をする必要があります。
安田さん:前に資金調達した時も種類株式で進めたのですが、契約手続きとか検討コストが大変だった記憶があります…。最初に契約締結するときの検討コストが普通株と比べてかなり差があると考えていいですよね。
西口さん:その通りで、種類株式でやるってなると、投資契約書、株主間契約書、財産分配合意書、種類株式の発行要項…と、契約書の数だけでもとてもいっぱいあります。
エンジェル・シード期の調達方法とは
安田さん:さらに深掘りしたいと思います。エクイティ調達を選んだ時に、選択肢が出てくるのが普通株、種類株、J -KISS。ここ1、2年でJ-KISSでの調達をよく耳にするようになりました。
普通株、種類株、J -KISSを起業家はどういう観点で使い分けたらいいのか。エンジェル・シード期でバリュエーションが低いときはどうだとか、バリュエーションが高くなってくると種類株の調達が多くなるとか。前半のエンジェル・シード期の注意点や、どういう調達方法がいいのか、アドバイスあったりしますでしょうか?
西口さん:エンジェル・シード期は普通株で調達するのもありえます。額も大きくないし、投資家側もこだわりがない場合が多いので。ただ、額が大きくなると、投資家が保護されないので、「種類株の方がいいよね」って投資家側の方はなるんですけど、スタートアップとして注意すべきなのは、種類株は契約書も分厚いし、色々交渉する時間もかかるということです。交渉の労力と弁護士費用が結構かかってきます。なので、数百万とか数千万を種類株式で調達するってなるとコスパが悪いのかなという感じがします。
安田さん:種類株は投資家保護に働いているので、初期でバリューも低くて、投資家からの交渉圧力が少ないフェーズは制約の少ない普通株がいいんじゃないかと。他方で、バリューを上げていこうとすると、投資家さんも種類株の投資を求めてくるということですね。
西口さん:種類株式を使うほどじゃないけど、普通株で投資受けるのが難しいっていうフェーズだとJ-KISSも選択肢になってきますね。
最近増えている、J-KISSの考察
安田さん:J-KISSが生まれた背景ですが、種類株の調達が専門家コスト・交渉コストが高いから生まれてきた、のような背景が強いのでしょうか?
西口さん:その通りですね。色んな条件について交渉をしないといけないっていうのが種類株式のデメリットだったので、その条件交渉なしにスムーズに投資できるスキームはないかって考えられたのがJ-KISSです。
安田さん:なるほど。お聞きの皆様には、JKISSについて知らない方も多いと思うので、J-KISSについて、簡単に説明していただけますでしょうか?
西口さん:J-KISSはCoral Capital(コーラルキャピタル)というベンチャーキャピタルが開発しており、契約のテンプレートを公開しているものです。スキーム自体は新株予約権を使っています。なのでJ-KISSで投資を受けるとなった場合は、投資家は新株予約権を受け取ります。なので、その段階では株主ではないんです。一定の条件を満たす資金調達が後々起こった場合、持っていた新株予約権がそこで発行される株式に転換されます。
安田さん:数年前までは、スタートアップシーンで新株予約権が登場するのは、従業員向けの税制適格のストックオプション発行という文脈がほとんどでした。有償の新株予約権を発行したことはありましたが、J-KISSでの調達経験はありません。J-KISSは発行時にお金が入ってきて、転換時にはお金が入ってこないという仕組みですよね?
西口さん:その通りですね。
安田さん:種類株と比較して、J-KISSだとどのような負担が軽減されるのでしょうか?
西口さん:種類株式で定めていたことが、J-KISSでは定めなくて良い。契約書だと、種類株だと合計100ページとかあったものが、J-KISSだと10ページちょっととか。
安田さん:J-KISSは、比較的に起業家寄りに設計されているのでしょうか?それとも、やはり投資家保護が働いているのか?どのような位置付けでしょうか?
西口さん:ちょうど間をとったというイメージですね。J-KISSで投資した段階はまだ株主ではないので、投資家の保護はそんなに効いてないです。ただ次のラウンドで株式に転換されて、優先株に転換されるのが普通なので、次のラウンド以降は投資家は優先株主になれるということで一定の保護を受けられます。
次のラウンドでの株式転換について
安田さん:それに関連して、気になる点があります。転換後は、必ず種類株式に転換されるのでしょうか?普通株式に転換されることもあったりしますか?
西口さん:ちょっと難しい話なんですけど、新株予約権を発行したら登記する必要があるんですね。その登記が日本独特の制度なんですけど、面倒くさくて色々制約があります。
この制約を満たすために、J-KISSってどういう建て付けになってるかというと、「次の1億円以上のラウンドで基本は普通株式になります。ただし、次のラウンドが優先株式の時は優先株式に転換されます。」みたいな建て付けになっているので、仮に普通株式で1億円以上調達するような場合には普通株式になります。
ただ、普通は1億円以上の調達だと、優先株式で調達することが多いので、少なくとも投資家としてはJ-KISSが優先株式になることを想定しているのが普通です。
安田さん:J-KISSで入れる投資家としては、次のラウンドが種類株式で実施されると考えているケースが多いと。それが期待値としてあるけど、日本はその登記っていう仕組みをクリアするために、前提として普通株式でやったら普通株式になるし、優先株式だったら優先株式になるっていう設計にせざるを得ない背景があるということですね。
とは言え、実務上は基本的に、投資家サイドはJ-KISSでやるイコール「次はきっと種類株式を発行するよね」みたいな期待感を持って投資している、ということなのですね?
西口さん:その通りです。
安田さん:例えば、起業家サイドとしては、次を「普通株式で絶対やりきるんだ」と考えながら、「今回とりあえずJ-KISSで」みたいなことを想定するよりは、そこは相手の期待値がきっと「種類株式への転換を期待しているだろうから」というのをある程度想定した上でJ-KISSの契約を結んでいった方が、調整コスト、交渉コストが狂わないという感覚でしょうか?
西口さん:まさにその通りで、投資家としては正直、普通株式に転換されたら困るっていうのがあって。それもあって、1億円以上の資金調達とかっていうトリガーを設定して、1億円以上なら普通は優先株式になる、という期待のもとにJ-KISSで投資している。それはスタートアップ側も理解しておいた方がいいですね。
安田さん:なるほど。今の話、とても貴重です。本当に勉強になります。私もそのような背景を知らなかったですし、スタートアップ経営者でも知らない方が多いかもしれないと感じました。他方、J-KISSを使おうっていう投資家さんって、やっぱりその辺はもう詳しいのでしょうか?
西口さん:これは結構まちまちで、特にここ数年相当普及してるんで詳しい方も多いと思いますけど、ただ、やっぱり個人のエンジェル投資家さんだったり、CVCだったり、大学のベンチャーキャピタルでも「初めてです」みたいな方に当たったこともあります。投資家によってはさほど詳しくないっていうことも結構あります。
条件変更で登記が難しくなることも
安田さん:J-KISS周りの実務で、大変だったなと思う事例でシェアいただけるものはございますか?
西口さん:私がスタートアップ側で受けた案件で、「J-KISSで大学系のベンチャーキャピタルから資金調達します」っていう話だったんですけど、
そのベンチャーキャピタルが「J-KISS初めてです」っていうことで、そのベンチャーキャピタルの弁護士さんもJ-KISSについてあんまり詳しくなかったみたいなんですね。「この条件を変えたらちょっと登記が難しくなる」みたいな条件をガンガン削ってきたりして、「これ削ったら登記できなくなりますよ」みたいなやりとりが発生したことはありましたね。
安田さん:Coral Capitalのテンプレートを変えてしまうと、登記ができなくなるっていう事象も発生するんですね。その辺は、起業家も専門家にお願いしないととてもじゃないと対応できなくて。そうすると、一定の交渉コストというか、専門家報酬も必要になってきて、やっぱ負担がありそうだなと。
そういう意味では、先ほど話した普通株でやるか種類株であるか、やっぱりJ-KISSでやる時も、そこそこの金額の調達をして、しっかりお金かけてでもちゃんと検討して調達するラウンドの時に繰り出した方が好ましいみたいなイメージを起業家としては受けたんですけど、そのようなイメージで合っていますでしょうか?
西口さん:そこは結構微妙なところで、今のは交渉が必要になったケースではあるんですけど、J-KISSってCoral Capitalがテンプレートを公開しているので、基本はそれをベースに交渉できるんですね。そんなに変えないなら、割とさらっと交渉が終わることも多いです。
安田さん:テンプレート見ても、「Coral Capitalさんが発行してるものと同じです」みたいな文言入って、それで交渉コストを軽減するような仕組みもありますしね。
西口さん:そうなんですよ。スタートアップ側はそうは言っても、J-KISSの中にもちょっと投資家に有利な条項とかがあるんですね。なので、そこを削ったりして、スタートアップに有利にするというのもありえます。ただそうすると、どうしても契約交渉の時間は発生してくるので、そことの見合いですよね。
J-KISSで投資家に有利な項目とは
安田さん:ちなみに、今のJ-KISSのテンプレートの中で、投資家に有利な項目は?
西口さん:一つは最恵待遇条項。最も恵まれた待遇を約束する条項というのがあります。そのJ-KISSの後に、より有利な契約をスタートアップが第三者と結んだ場合には、このJ-KISSはそのより有利な方に変えられますという情報が入っています。これって何をもって「有利」って考えるのかとか、あるいはJ-KISSを実際に有利な内容に変えるとなったら、結構色々めんどくさかったりとかするので、それはスタートアップにとってはあまりよろしくはない条項だったりします。あとは、情報請求権とか、追加投資できるような権利などもどこまでの投資家に与えるのか、という話はありますね。
安田さん:株主ではないけれども、新株予約権として投資契約書の中で、権利を与えていくのかどうか、という検討ポイントはありそうですね。
西口さん:情報請求権って投資家としては当然欲しい内容ではありますけど、そうは言ってもちょっとしか投資してない人に与えるのかとか、事務コストの問題もありますね。
安田さん:確かに。J-KISSは簡単とは言え、少額で調達すると、調整コストと資金調達のニーズといった、「どれぐらいお金を集めたいか」の見合いで検討していくってことなんだな、という印象を受けました。
周りの起業家も、よく言っているポイントが、J-KISSの一つのメリットとして、バリューの確定を次のラウンドまで、という点です。それはそれで事実とは言え、よく読むとバリューキャップっていうのがあるので、そこまでバリューを先送りできるっていうほど、先送りしている感覚が無いんですけど……皆さんどんな風に実務上、捉えていらっしゃるんでしょうか?
西口さん:それは結構重要なところですね。前提として、バリュエーションキャップとかディスカウントの説明を簡単にしたほうがよろしいですか?
安田さん:はい、お願いします。
バリュエーションキャップとディスカウント
西口さん:J-KISSは次の資金調達ラウンドで発行されるのと同じ内容の株式に転換されるということで、何も定めがなかったら、次の資金調達ラウンドのバリュエーションで転換されるっていうのが、まず原則なんですね。1000万円をJ-KISSで調達して、次の資金調達ラウンドのバリュエーションが10億だとすると、単純計算で10億分の1000で1%になるんですね。
ただそれだとJ-KISSでリスクをとって早く投資をした投資家のうま味がないよねと。ということでバリュエーションキャップとディスカウントというのがJ-KISSの契約書の中にはテンプレートとして入っています。
これは何かというと、例えばバリュエーションキャップが5億円となったとすると、5億円がバリュエーションの上限になるんですね。つまり、次の資金調達ラウンドのバリュエーションが10億円だとしても、5億円で計算をして、1000万円をJ-KISSで調達したパターンだと5億分の1000で2%になる。
ディスカウントの方はだいたい20%引きなんですね。なので次の資金調達ラウンドのバリュエーションが10億だとしたら、20%引きで8億。8億分の1000みたいな計算でシェアを計算する。そのバリュエーションキャップかディスカウントか、どちらか投資家に有利な方を使って、どれくらいの株式になるか計算するっていうのが大枠の仕組みです。
安田さん:J-KISSっていうのはもう調達している金額が決まっている。あとは何株もらえるかっていう計算を、バリュエーションキャップなのかディスカウントなのか、投資家に有利な数字の方を引っ張ってきて、株数が決まっていくっていう考え方です。
例えば5億をバリュエーションキャップに設計したからと言って、次のラウンドを5億を上限に設計しないといけないわけではない。起業家が頑張ってバリュエーション10億で調達することが可能という理解で良いでしょうか?
西口さん:それは可能です。
安田さん:ただJ-KISSを持っている人は、バリュエーションキャップが5億の場合、例えば、ディスカウントが20%で8億と5億。5億の方が低いので、5億のバリューで計算した時の株数を受け取るっていう計算で私の理解は合っていますでしょうか?
西口さん:その通りです。なのでバリュエーションキャップが実質J-KISSのバリュエーションになるということになります。なので、バリュエーションキャップが低いと、結局、バリュエーションを先送りするっていう効果はあんまりないということになります。
安田さん:よくあるのはシードラウンドのレンジって、だいたい2億から5億ぐらいのレンジで動いています。実務として、シードラウンドをJ-KISSでやることがある。ただ、バリューだけ見ると、バリュエーションキャップが3億とかだったら本当にJ-KISSやる意味あるの?と思ってしまうかなあと。もちろん交渉コストコストが減るっていうメリットとか色々あるんですけど。
西口さん:諸々の条件交渉をしなくていいというのは大きなメリットではありますが、バリュエーションの交渉を先送りできるっていうメリットはあまりないですね。
安田さん:なるほどですね。起業家界隈で、バリュエーションを先送りできるメリットがあるっていうのが先走っている印象が勝手にあるけど、実際のところバリュエーションキャップあるよと。
資金調達を急いでいるケースとか、交渉コストが減るっていうメリットを享受する。その代わりに、次のラウンドで種類株投資の期待値を投資家は思ってるから、結局、今回は楽だけど、次しっかり交渉しなきゃいけない。結局J-KISSって、時間を買っている感覚で調達をやりに行くみたいな心構え方が健全なのかなって今聞いてて思いました。
西口さん:そうですね。労力を先送りするってのもあるし、J-KISSでの投資の時点では投資家は株主じゃないっていうので、株主管理コストを先送りすることができる。
安田さん:よくできているシステムですね。
株主管理で大変だったこと
西口さん:株主管理コストの話が出たので、せっかくなので安田さんの大変だったご経験を聞きたいです。
安田さん:私の話で恐縮なんですけど、一回目のスタートアップ時にシードフェーズで調達しました。当時はビジネスモデル上、キャッシュもそこそこ稼いでいたので、大きく調達するニーズはなかったんですけど。とは言え、一回目で株主を仲間に入れて、種類株で調達をしました。
一般的にスタートアップが投資を受ける時は種類株という話があるって言うのをにわかに知っていたので、初期、バリューが一桁台の前半のフェーズでしたが、株主・企業・VCも含めて4社に株主になってもらった時に、種類株を発行しました。
その時の種類株の条件で承認事項といって、こういうことをする時に、種類株主の許可がいる事項がありました。種類株主が一気に4社に増えたので、その4社に常に承認を取らないと、一定のことができない状況になってしまって、そこは正直苦労しました。
西口さん:それは結構事業スピードに影響しますよね。
安田さん:リードのVCさんのところは社外取締役として入ってくれたので、月次で取締役会とか開いていると、そこで調整終わるんですけど、他の3社さんって必ずしも種類株主じゃなくてもよかったはずなのに、横並びで種類株主になりました。基本的には応援団なのですが、都度都度、調整するのが結構、勝手な起業家目線ですけど、手間取られてしまったなっていうのはありました。
西口さん:それは結構大変だと思いますね。本当は、投資契約で、事前承認をあんまり細かくし過ぎないとか、リードVCにだけ事前承認をとればいい形にするとかが必要なんですよね。
安田さん:そこはすごく失敗したなと思いました。同じラウンドだからって、同じ権利を与えてしまったのですが、そうじゃなくて投資契約書とかで限定できますもんね。だからその辺はしっかり考えればよかったなって反省があります。
最後に
エクイティ調達をするにあたって、普通株、種類株、J ~KISSのどの方法にするか迷う起業家は多いと思います。西口さんがお話されていたように、それぞれの調達方法にメリット、デメリットがあり、かつ企業のフェーズによって、適切な調達方法は異なります。本記事を参考にしつつ、専門家の方の力を借りながら、適切な調達方法を慎重に判断しましょう。
■登壇者プロフィール
西口 健太(にしぐち・けんた)氏
弁護士・ニューヨーク州弁護士
(梅田総合法律事務所パートナー弁護士)
訴訟を含めた企業法務全般を取り扱うも、世界に挑戦できる
スタートアップの支援に力を入れるため、米国西海岸のロースクールへ留学。
その後、米国シリコンバレーのアクセラレーター/ベンチャーキャピタルであるPlug and Playに出向し、米国スタートアップへの投資案件、同社の日本における投資スキームの検討・立案などに携わる。また、米国法律事務所やイスラエルのベンチャーキャピタルにも出向し、スタートアップへの投資案件に従事。
現在では、国際案件への対応も含め日本で弁護士として活躍。
スタートアップ側及びベンチャーキャピタル・CVC側の双方で、日本及び米国等海外における、優先株式、J-KISS、SAFEなどによるエクイティ・ファイナンス案件に30件以上携わる。
スタートアップの顧問弁護士として法務機能のアウトソーシングを含めた法的支援・ビジネス促進も行っている。
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安田 瑞希(やすだ・みずき)氏
フレンズ株式会社 代表取締役
2003年明治大学農学部卒。公認会計士。
植物工場ベンチャーである(株)ファームシップを創業し、年間数十億の収益を生む会社へとグロースさせた。事業戦略、オペレーション、海外事業からファイナンスに至るまで幅広い領域をリードした。
その後シリアルアントレプレナーとしてフレンズを創業。
フレンズでは、プロジェクトマネジメントルーツ「インチーム」をSaaS事業として展開すると共に、グローバルリソースを活用した事業開発・エンジニアリング支援事業を行っている。
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執筆:FUNDOOR
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