
登壇者 : 株式会社ユニコーンファームCEO 田所雅之 , 株式会社日本クラウドキャピタルCEO 柴原 祐喜
概要:2020年8月27日、「起業の科学」「起業大全」著者の田所雅之氏と、累計35億の資金調達を行なっている株式型クラウドファンディングのFUNDINNOを運営している日本クラウドキャピタルCEO 柴原祐喜がコロナにより変ったスタートアップの資金調達に関して対談しました。
「スタートアップの資金調達の極意」とは?

—資金調達よりも大切なこととは?
田所雅之氏 (以下、田所氏):
スタートアップファイナンスとは、資本政策またはエクイティストーリーにおいて、どれぐらい資金調達するのか、ということですがこれはあくまで結果です。
いくらの時価総額でいくらお金が要るというファイナンスは、あくまで利益や売り上げに対して将来に期待をかけ合わせたものです。
起業家が資金調達する際には、今後どのような事業を作っていくのか、人・物・金のプロセスの解像度を上げ、それを勘案した上で、100%の株を、いつ誰にどのタイミングでどれぐらい渡して事業を大きくするのかというところが非常に大事です。
そこで、まず考えるべきは「自分たちの戦略・ビジネスモデルはどうなっているか」です。
戦略、ビジネスモデルによって、雇う人やプロセスが全く変わってきます。
そのため、どれくらいの資金が必要かも変わってくるでしょう。
ビジネスモデルや戦略から資金がどれくらい必要かを予測し、 そのうえで資本政策を組んでいくべきです。
—資金調達のタイミングについて
JCC 柴原 (以下、柴原):
田所さん、ありがとうございます。資金調達をする以前に、調達した資金をどのようにして使うのか?を考えることが重要なのですね。
視聴者の皆様も、僕もとても気になるところですが、どのタイミングで大きな資金調達をする判断をするのですか?
田所氏) :
大切なのはクリティカルサクセスファクター(主要成功要因)を見つけることです。
クリティカルサクセスファクターを見つけたら、資金用途やPMFについてわかります。
例えば、FUNDOORのようなSaaS型だったら、チャーンやユニットエコノミクスである程度PMFが測れるので、そのクリティカルサクセスファクターを達成するためにはいくら必要なのか、が決まり、資金調達のタイミングも決定することができます。
—資本政策のキー
柴原) : なるほど、クリティカルサクセスファクターを発見することが重要なのですね。ありがとうございます。
続いて、こちらは視聴者の方からご質問があったのですが、「スタートアップで、創業1年目のシード期に売上10万円もいかないときの資本政策のキーを教えていただけないでしょうか?」です。
田所氏) : 資本政策のキーは悪いおじさんに騙されないことです。(笑)
売上10万円でも、もしかしてすごいDeepTechをやっていて、将来的に大きくばけるようなものを作っているかもしれません。

特に、創業初期は一番資本政策の知識レベルが低いので、気を付けなければなりません。
そんな資本政策を考えていく中でも、特に考慮しなければならないのは共同創業者選びです。
シード期あるあるですが、失敗のケースとして、元同僚だったから半分に分けたとか、大学に一緒に行ってたので三分の一づつ分けたというのはほぼうまくいきません。
大切なのは、あなたたちがそれぞれどれくらいその事業にコミットできるかを軸に決めることです。
新型コロナウィルスによってスタートアップの資金調達はどう変わるのか?
—コロナ禍での資金調達で気を付けるポイントは何か?
田所氏) : 結論は、ランウェイを少し保守的に見積もることに尽きます。
ビフォーコロナによく言われていたのは、いかにして前倒しに資金調達するかということで、ランウェイは12ヶ月でいいと言われていました。そこでアクセルをベタ踏みしてどんどん採用していけばよかったのです。

去年はスタートアップが成長できないのは、採用できないからと言われており、人が高騰していました。
しかしアフターコロナにおいては、生き残ることが大事なので、間接費を下げ、ランウェイを長くすることが大事です。つまりオペレーションを最適化することだったり無駄を削減することです。
生き残ることが大切だからこそ、通常時の売上の2/3でランウェイを計算しランウェイを少し保守的に見積もることが重要です。
—実際にコロナ前とコロナ後で、調達金額や調達期間の状況に変化があるか?
柴原) :ありがとうございます。ランウェイを保守的に見積もることが大切なのですね。
続いて、視聴者の方からの質問が届いているのですが「実際にコロナ前とコロナ後で、調達金額・調達期間の状況に変化がありましたか?」という質問です。

田所氏) : 確かに領域によって、追い風・向かい風はありますね。
例えば、向かい風側でいうとインバウンド系、リテール系は厳しいです。結局、人が移動するところは、売り上げと流通総額が相関するため向かい風です。
一方、追い風側でいうとサブスク型はすごく強いです。コロナ禍で伸びたのが、AmazonプライムやNetflixなどです。一旦そのユーザーが行動習慣、行動変容をしてしまうとサブスク型はなかなかやめないからです。
—スタートアップの人件費の削減について
柴原) :ありがとうございます。領域によって調達金額や調達期間に変化があるのですね。
最後の質問です。「現在、人員を削減しようと考えているのですがどのような軸で削減していけばいいのかで迷っています。削減する際には、どのように判断すべきですか?」です。
田所氏) : これも経営ミスですね。起業家は自分たちのプロダクトを過大評価してしまいます。
以前にも全く同じ質問をスタートアップから受けたのですが、そのスタートアップは去年2億円調達しましたが、蓋を開けてみたら全然PMFしていませんでした。
PMFしないで2億円調達したので、とりあえず人を15人雇ってしまい、バーンレイトが3倍上がってしまいました。だからこそ、どこがクリティカルサクセスファクターかをきちんと把握し、そこに対して現在の従業員数は適切なのか?を考えることが大切です。
従業員数が多い場合は、心を鬼にして何らかの形で解雇するしかありません。
このような場合、コミュニケーションを密にして、ちゃんと言うことが大切です。
謝ることや、「自分が判断ミスした結果、時期尚早に拡大してしまって、こうなったけどこのままあなたを雇い続けたら半年後に死んでしまうので、申し訳ないけど退職していただけないか」みたいな感じできちんと話すことがこういうケースの時は大事です。
FUNDOORの新機能について
—FUNDOORの従来の機能
ここで弊社クラウドキャピタルの新サービスFUNDOORの新機能について、中村より説明致しました。
中村) :現在、日本クラウドキャピタルは、FUNDINNO以外に、SaaSのソフトウェアとしてFUNDOORを開発しています。
現在提供している機能として、事業計画作成機能があります。最短5分で入力フォームに入力するだけで事業計画が作れて、実際にここのKPIが下がったらどうなるのかといったようなシミュレーションも簡単にできます。
この他、資本政策、資金調達の流れを表示している機能などもあります。また、ここにさらに新しい機能が搭載されました。
最短1日で株主総会の開催を完了できる機能です。

こちらは大きく3つの機能に分かれます。
機能1:
FUNDOORで株主総会の招集通知から登記等で必要となる議事録まで自動で作成できます。
現在、多くのスタートアップの方は、士業、専門家などに10万~を払って作っていただいています。コミュニケーションコストや、実際に払う10万、20万は安くありませんが、FUNDOORでは全てがサービス内で完結します。

機能2:
現在株主総会ではどうしても「紙」が発生していて、招集通知を株主総会開催の1週間前に送付して、委任状を返送していただくのが普通です。
FUNDOORではメールなどで電子的に招集通知を送り、数クリックするだけで委任状の作成を行うことができるので、紙の資料がなくなります。

機能3:
電子的に委任状を回収するので、議決権の行使状況を自動集計し、さらにクラウドで全て株主総会の履歴を管理していくので、今までのような管理がなくなります。

FUNDOORはシード・アーリー期の株主総会だけでなく、株主数が多く、実際に株主総会を開催しなければいけない方に対しても、ペーパーレスで効率的な株主総会の開催方法を提供しています。
—田所さんからFUNDOORに関して
株主との関係は本当に重要です。
僕もユーザーのカスタマーサクセスにこだわっていて、スタートアップの皆さんは特に、FUNDOORを使うことによって、より自分たちのリソースを、自分たちのプロダクトや顧客に注力する時間に有意義に使っていただければと思います。
本日のまとめ
起業家にとって成長のネックとなる資本政策の問題についてどのように考え、行動すれば解決するのかを田所さんは示してくださいました。
弊社のFUNDINNO、FUNDOORも使い、起業家の皆様が課題を解決して事業に専心できるようになることを、これからも全社あげて支援していきたいと思います。